タガログ語の対象優位性(2)

タガログ語の焦点システムを理解するために重要な「対象優位性」について、前回「タガログ語の対象優位性」という題で記事を書いてみたが、今日はその続き。そもそも「対象」とは何かについて考えてみたい。

前回、俺は 「対象」=「目的語 」という書き方をしたが、タガログ語で「対象」とは、実は目的語だけでなく、「方向」も含んでいると言うべきだと思った(ここで言う「方向」とは、例えば”Pupunta ako sa Manila”(私はマニラに行く)のsa句である。)。「対象」=「目的語」ではなく、 「対象」=「目的語」と「方向」という風に言い換えた方がより正確になり、説明がしやすい。

でなければ、「方向」に焦点が当たる「方向焦点動詞」とは何なのかよくわからないと思う。

“pumunta”(行く)の例でいうと、行先が人称代名詞や人名その他の具体的な人である場合、そちらを焦点化して(=ang句にして)”puntahan”を使う場合が多い。

例) Pupuntahan ko siya. 私は彼 (女) のところに行く。

なお、こういう文で”Manila”などの都市名、国名などが焦点化されることは少ないようだ。

どうも、目的語だとか方向だとかという区別はタガログ語的には大した意味がないようにも見える。「行為者」でなければ「対象」ということにして、「行為者焦点」と「それ以外」に分けてしまえばそれでよいのかもしれない。

そんなことを最近考えているのだが、もう少し慎重に考えてみて、続編を書きたい。

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新しいタガログ語教材(日本語)

日本語で書かれたタガログ語教材が、2018年に相次いで出版されているのでメモがてら紹介。

ちなみに、タガログ語とのフィリピノ語とフィリピン語は、すべて同じ言語のこと。フィリピンでは国語が”Filipino”だが、東京外大は「フィリピノ語」と呼んでいる一方、阪大は「フィリピン語」と訳している。正式名称はともかく、巷では”Tagalog”と呼ばれているので、日本語でも一般的にはタガログ語と呼ばれている。

1) 大学のフィリピノ語(2018)山下美知子ほか、東京外国語大学出版会

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ちゃんと勉強したい人向け。これまで東京外大の教材はオンライン公開されている「言語モジュール」があったが、やはり本の方が使い勝手は良い。この本はけっこうな厚さなために値段も2冊分ぐらいあるが、その分、内容的にも濃い。初級の後半から中級をカバーする日本語で書かれた教材は今までほぼ絶無だったので、貴重。

初めての人には大上先生の教科書をおすすめしたいが、何冊目に「大学のフィリピノ語」はよいと思う。

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2) デイリー日本語・フィリピン語・英語辞典

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日比(比日ではない)のポケットサイズの辞書。日本語で書かれたタガログ語の辞書はこれまでにもあるにはあったが、ちょっと使えないものばかりだったので皆さん諦めて比英、英比を使っていた。そうなると、タガログ語の前にまず英語を勉強せよ、ということになりハードルが高かった。

さて、以上を踏まえた最新のおすすめ教材リストを、東京外大の長屋先生が作っている。今後のアップデートも含め、こちらを見ておけば信頼できそう。

https://sites.google.com/site/naonorinagaya/teaching/tagalog

ミンダナオのマラウィ危機、死者が175名を超える

先週からこのブログでウォッチしているミンダナオ島南ラナオ州マラウィで起きている掃討作戦について。6月2日の時点で双方の死亡者計が175名になったとABS-CBSニュースが報じた。このうち、テロリスト側は120名。

(英語記事)
http://news.abs-cbn.com/news/06/02/17/marawi-city-siege-death-toll-reaches-175

テロリスト側の死者には外国人も含まれており、判明しているだけでもインドネシア人2名、マレーシア人2名、サウジアラビア人2名、イエメン人1名、チェチェン人1名だという。

政府は6月2日の記者会見でテロリスト側はアブサヤフ&マウテグループではなく、実際はISISだという見方を示した。フィリピンでのISISの活動を認めたということになる。ただ、どちらにせよ母体はアブサヤフ&マウテグループその他だろうから、外国人が多少参加していても主体が変わることはないと俺は思う。

掃討作戦はまだ終わっておらず、一連の事件による被害者はさらに増える見込み。

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買ってはいけないタガログ語の本

フィリピン人もわからないような単語がたくさん出てくる。

「フィリピン語単語BOOK」国際語学社(2014)

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おそらく単に古臭い単語が多い、ということだと思うが。

タガログ語は書き言葉の伝統があまりないので(主に話し言葉として使われるので)、日本語だと使いそうな語彙でもタガログ語では馴染まないものも多々ある。ようは、小難しい言葉は英単語を使ったり、文章まるごと英語で言ってしまったりするわけ。小難しい言葉を使う人たちは当然かなり英語ができる人たちだから。社会言語学ではこういう、ある社会における言語の力関係をダイグロシアといいます。

セブアノ語などの地方語は、さらに一段階下とみなされ、タガログ語よりも一段と書き言葉とその規則がないです。具体的には、タガログ語ならまだ学校の科目で「フィリピノ(フィリピン語)」があってテストもあるけど、地方語にはそれがない。基準となるものがないから、言葉の変化がすごく早いです。

最後に、個人的なアドバイスですが、単語の暗記よりはフレーズの暗記の方が効率的です。共起しやすい単語(たとえば「~語」+「話す」)を一緒に覚えておけば文法理解も進むし会話のときにスムーズに出てきやすいからです。この「共起」のことは、「コロケーション」とも言います。
おすすめはこのシリーズ(多言語で出てます)。

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フィリピンのクリスマス「パスコ」、「アギナルド」、「ノベナ」

フィリピンのクリスマスは「パスコ」と呼ばれますが、”pascua”は他の国では「イースター」の意味で使われると、昔、「なんでパスコがクリスマスなのか」という記事で書きました。その中で、少なくとも中南米では”pascua”はキリストの「生誕」を意味し、クリスマスも含まれるということを書きました。たとえば”Pan de pascua”はチリのクリスマスに食べられる特別なパンです。

(2023年12月追記:ナビマニラにわかりやすい解説が掲載されました。おすすめです!↓

【フィリピノ・ワールド】Pasko クリスマス

ちなみにタガログ語で”pasko”を動詞にした”mamasko, namamasko, namasko”はそれぞれ「クリスマスを祝う、祝っている、祝った」というような意味で、祝う事は”pamasko”。道端では、「クリスマスだからお金を恵んでちょうだい」というような意味でも使われていますが、これはたいてい子どもたちがクリスマス・キャロルを歌いながら家々を訪問する「カロリング(caroling)」のときに聞かれます。カロリングの伝統は、アメリカの影響が強いのではと思います。

クリスマスのときにこのようにお金をあげることは、「アギナルド」と呼ばれます。日本語で説明する際に「クリスマスのときにあげるお年玉」と書いている人もいます。一方、中南米では「アギナルド」は今ではクリスマスの際に支払われる給料のボーナスで、特に一カ月分のものは「13カ月目の給料」という呼ばれ方をします。フィリピンでも法律によって”13th month pay”が保障されていますが、「アギナルド」とは区別されています。ちなみに「アギナルド」の起源についてはスペイン語のウィキペディアに項目があります(参照)。意訳すると「もともとはクリスマスのときに渡すチップ」とされていますので、現在のフィリピンで使われている「アギナルド」の意味にかなり近いと言えるでしょう。

ところでフィリピンで有名な「アギナルド」には、フィリピン革命で初代大統領になった「エミリオ・アギナルド」もいますが、彼はその後香港に亡命し、けっこう長生きします。youtubeにエミリオ・アギナルドがスペイン語でちょっとスピーチしている動画があるので参考まで。

話がそれましたが、フィリピンのクリスマスで特徴的なものの紹介の最後は、「ノベナ」です。クリスマスから数えて9日前から早朝に行われるミサで、フィリピン特有と言われています。タガログ語では「シンバン・ガビ(simbang gabi)=夜のミサ」です。スペインなどでは深夜に行うのですが、フィリピンでは早朝だ、というところがフィリピン特有なのでしょう。ちなみにどちらもスペイン語では「雄鶏のミサ(misa de gallo)」という名がついています。

ということで、フィリピンのクリスマスについてでした。

タガログ語とセブアノ語の文法の違い

タガログ語の文法入門を作って3カ月弱で、ようやくビュー数が1000を超えました。「文法入門」ということでわりと硬派な内容ですが、大学の先生みたいな正確性に重きを置いたガチガチの教え方はしていません。

さて、タイトルの件、タガログ語とセブアノ語の文法的な違いについて。私はセブアノ語は会話レベルとは言えない程度なのですが、ダバオに1年ちょい滞在して観察した経験から大きな相違点を3つ挙げてみます。

と、その前に。基本的には、両者は文法的にかなりの程度似ています。ただしタガログ語だけを知っている人とセブアノ語だけを知っている人が話してもあまり理解し合えません。文法が似ていても語彙(ようするに単語)がかなり違うからです。

文法的な違いで目立つものは、タガログ語を基準にして言うと

1) セブアノ語には敬語がない
これはよく知られていることですが、タガログ語のときにはしょっちゅう耳にするpoやhoがセブアノ語には全くない。あと、タガログ語では目上の人にはkaではなくkayo、moではなくnyoまたはninyo、あるいはiyoではなくinyoを使うところ、セブアノ語では目上の人に対してもそれぞれkaやnimo、imoを使う(=単数形と同じ)。

2) セブアノ語には倒置詞の”ay”がない
タガログ語は特にフォーマルなスピーチなんかのときに、”ay”を使って語順を逆さまにすることが多い(たとえば、”Pilipino ako.”の代わりに”Ako ay pilipino.”と言うように)。一方、セブアノ語ではこの倒置詞というものがない。

3) セブアノ語にはタガログ語にはない小辞がある。
たとえば、タガログ語の「とても」にはnapaka-という接辞を使ったり、畳語(二回繰り返し)にしたりするが、セブアノ語ではkaayoという副詞のような小辞があり、文が全然違ってくる(フィリピン諸語の「小辞」について、詳しくは当ブログ「二番目ルール」を参照)。

セブアノ語の例) Oy, basa man kaayo ning t-shirt nimo, (ねぇ、この君のTシャツはびしょびしょじゃないか)
参考:上記の文のタガログ語での訳例)Basang basa na naman ang iyong T-shirt na ito.

(参考:セブアノ語の小辞とその順番については、当ブログ「セブアノ語とタガログ語の小辞の比較」を参照)。

4) セブアノ語では代名詞に省略形がある。
「私たち(自分たちだけ)」の”kami”が”mi”になったり、「私たち(相手を含む)」の”kita”が”ta”、「あなたたち」の”kamo”が”mo”とか、
指示代名詞ではkiniがni(意味は両方とも「これ」)、kanaがna(「それ」)とか、理屈は単純でも覚え慣れるまでは大変です。

5) “wala”の使える範囲が違う
タガログ語ではwalaは存在文の否定のときだけしか使われないのに対してセブアノ語では動詞の否定でもdiliとwalaを使い分けます。

と、こんな感じで他にも違うところがちょこちょこあり、ちゃんと習得するとなるとタガログ語を勉強した後でもそこまで容易ではないです。
動詞の活用も、仕方が違います。

最後に、文法ではなくて語彙について。フィリピン人がよく笑い話にするように、いくつかの単語は同じ発音なのに、タガログ語とセブアノ語で意味がまったく変わります。有名なのはmalibogですが、ほかにもあります。

ただ、単語をつないで会話をするだけならそんなに難しくありません。まともに話そうとする人は、セブアノ語は市販の教科書も少ないので自分で教科書を作るぐらいの意気込みでないときついと思います。逆に、それが楽しいと思える人なら習得は速いでしょう。

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自作タガログ語youtubeレッスン(1~7)を作りました。

2年ぐらいオンラインでタガログ語を教えてみて、今になってもライバルが現れないという悲しい現実(笑)。

ためしに「オンライン タガログ語 日本人講師」でググったら、俺しか出てきませんでした。

ということは、他の言語でやっているようにyoutubeでレッスンビデオを公開するなんてのも俺しかできないのでは、と思ったけど、さすがにそれは先達がいました。日本で育つフィリピン系の人はいっぱいいますからね。

さて、では俺しかできないこと、ということで文法のレッスンをすることにしました。

やり方は、ペンタブレットを使ったシンプルなもの。中国メーカーのHUIONというやつが送料込みで3200円だったのでそれを使ってます。今のところ、好調です。

 

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タガログ語:「小辞と代名詞の二番目ルール」

タガログ語を学ぶとき、耳から覚えてしまう人が多いと思います。というのも、日本語等と比べてタガログ語では会話で使われる文法パターンや語彙がかなり少ないから。動詞の活用にしてもシンプルですから、動詞のフォーカス・システムの基礎さえ理解できれば、あとは自然習得も十分可能だと思います。

とはいえ、他にもトリッキーなところはあります。ようは、例外。

中でも一番苦労するのは、語順が変わるところだろうと思います。以下の二点。
1) 接辞”ay”
もともとタガログ語にあったのかなんなのかわかりませんが、”ay”は興味深い接辞です。カードゲームのウノで言ったら「リバース」みたいな役割を担っていて、これが付くと語順がひっくり返ります。しかし語順が変わるなんてこんがらがるし、カジュアルな会話では頻出しないので初心者は避けるほうが無難。

2) 「小辞と代名詞の二番目ルール」
私は、「小辞と代名詞の二番目ルール」と読んでいます。説明すると複雑になってしまいますが、てっとり早く言えばとにかくこのふたつは2番目に来たがる。どんな時にかというと、HindiとかPwedeとかdito, sa ….とか、とにかくなんかが前についたとき。2番目に来る「代名詞と小辞」とは、ようするに次の文から”kumusta”を除いたふたつのこと。

a) Kumusta ka na?
b) Kumusta na kayo?

この2パターンさえおさえておけば、”po”だろうが”ba”だろうが、あるい”lang”でも、”na”のあるところに置き換えればいい。そして、代名詞と接辞の順番について言うと、b)のパターンが普通だが、”ka”のときはa)のパターンになる、と覚えておけば、とりあえずは十分です。

この「二番目ルール」の結果、VSOだったはずの語順がSVOになったりもしますが、それは結果論です。そもそもSVOとかいう分析の仕方はヨーロッパ言語用のものなので、タガログ語では特に参考にもなりません。

さて、学習が進んで目的焦点とか方向焦点とかの動詞タイプをやるようになったら、そのときは追加で”ko”,”mo”,”nyo”や、代名詞のコンビネーションを覚えなければいけません。順序には規則性がありますが、それはまたいつか書きます。

<おまけ1>
「二番目ルール」について、たとえば以下のサイトで日本語解説があります。ま、読んでわかるようなら苦労はいらない、という感じかもしれませんが。
http://learn-tagalog.finite-field.com/home/4-ay
http://pilipino.nobody.jp/mag-aral/lesson75.htm
http://filipino.fc2web.com/yamashita/yamashita435.html

<おまけ2>
セブアノ語(ビサヤ語)も、「二番目ルール」があります。おそらく他のフィリピン諸語にもあるでしょう。たとえばチャバカノ語にもあります。

タガログ語と分裂文

こんなことを言うと専門家の方々を怒らせるのでしょうが、ざっくり言って言語学の話って外国語学習には関係のないことが多いと思います。

もちろん言語学といったって幅広いんですが、素人から見ればまとめてひとつ。実用的に役に立つ話といえば、たとえば英語を勉強するときに基本的な発音記号を知っておくと学習がスムーズだとか、チョムスキーの言語獲得装置の話は元気づけられるとかぐらいでしょうか。ま、たまに役立つから無視するにはちょっと惜しい。

さて、タガログ語に関していえば、そもそもあんまり実用的な観点から研究しようという人もいないようなので、少なくとも日本語でタガログ語に関する論文を探したって勉強の役には立ちません。英語で探せばもっと結果は違うかもしれませんが、そんな時間があるなら言語学習に費やすべきですね。

私だって言語学の文献を読むのは外国語学習のためではなく、単なる趣味です。あるいは、あこがれる気持ちから。

で、この前知ったのですが、「分裂文」という概念はタガログ語学習に役立ちそうだと思ったのでここに書いておきます。

まず、分裂文に関してはこちらを参照。
http://www.weblio.jp/wkpja/content/%E5%88%86%E8%A3%82%E6%96%87_%E5%88%86%E8%A3%82%E6%96%87%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81

タガログ語では、何?や誰?などの疑問視を使った疑問文では基本的にこの形にします。たとえば、

Sino ang kumain ng isda ko?
だれ  食べた人  私の魚を

と並べて、「私の魚を食べたのは誰ですか?」となります。

そして返事もこの型をそのまま使って、

Si John ang kumain ng isda mo.
ジョン   食べた人   あなたの魚を

「あなたの魚を食べたのはジョンです。」とするのが自然。

これは型として覚えておかないと、苦労するかもしれません。ようは、日本語で「誰が私の魚を食べたんですか?」または英語で”Who ate my fish?”からタガログ語文をイメージするとしたら、この結論にはたどり着けないだろう、ということです。さきほど日本語訳として書いた分裂文の「私の魚を食べたのは誰ですか?」、英語だったら(不自然かもしれませんが)”Who is the one who ate my fish?”からタガログ語文を導き出す、と理解しておいたらよいでしょう。

で、ここからは上級編ですが、最近ひとつ気になった使用例を発見しました。とある英語の論文からなのですが、

Ninakaw NINO ang kotse mo? =Who stole your car? (Kroeger1993)

ここで”nino”は”sino”のng形のようですが、こんな言葉を私はこれまで聞いた覚えがありません。ちょっと昔のタガログ語なんでしょうかね。これについて、ご存じの方がいたらぜひ教えてください。

タガログ語翻訳の悩み(1)

私がよくつまづくのは、たとえば英語で言ったら”with-“となるような場合。

withと言ってもパターンはいろいろあります。例えば、
1) I ate with him.
のように人と何かをするような場合だと、kasamaを使いたいですが、こいつは名詞なのでひと工夫。

“Siya ang kasama kong kumain.” 彼が焦点になっているのが気に食わないのですが。。

ただ、kasamaは実は状況によっては副詞的に使える場合があるようで、ここがよくわからんところ。名詞の後だといいのか。

*追記1:”kasama”を使った言い方はさらに次の方法が可能だそうです。
“Kasama ko siyang kumain”.
“Kumain ako kasama niya.”

2) Ang buhay kasama ng mga baboy

これって実は”that”の”na”が隠れているだけ?

2′) Ang buhay na kasama ng mga baboy

*追記2:”na”はいらないそうです。

さておき、他のパターン。
3) He cried out with a loud voice.

この場合は「ng + 形容詞」を使って、

Umiyak siya ng malakas ang boses.

となるのか。後ろの方に”ang”が来るのが不安。ここでは”ng”だろうか。

それとも形容詞文にしてしまうか。

“Malakas ang boses sa pag-iyak.” やはり焦点のせいでニュアンスがずれていっている気がする。

こんな感じで、いつも迷うのです。ま、こんな思考をするのは翻訳するときだけですがね。

次回へ続く。