ブキッドノンで視察団がNPAに襲われた件

去る5月30日のことだが、ミンダナオ中部ブキッドノン州のインパスグオンで、先住民コミュニティを訪れていた国際視察団をNPA(共産ゲリラ)が襲う事件があった。護衛の軍人7人を含む11人が負傷者したが、死者はいなかった。

この視察団はASEAN諸国からの参加者で構成されていたので、この事件はベトナムのメディアも報じている。

(英語記事↓)
https://www.pna.gov.ph/articles/1071108

https://www.philstar.com/nation/2019/05/31/1922257/7-soldiers-hurt-bukidnon-landmine-attack

https://www.vietnamnews.net/news/261316586/npa-terrorists-attack-foreign-observers-convoy-in-bukidnon

アメリカに喧嘩を売る国 フィリピン大統領ロドリゴ・ドゥテルテの政治手腕
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ミンダナオ戒厳令延長が承認された件

ロイターによれば、今年末までだったミンダナオ島全域に対する戒厳令の一年間の延長がフィリピン議会によって承認された。

フィリピン議会、ミンダナオ島の戒厳令延長を承認 来年末まで」ロイター通信2017年12月13日付

名目はISに忠誠を誓うイスラム過激派グループの掃討だが、ミンダナオには共産ゲリラ”NPA(新人民軍)”の勢力もあり、こちらの鎮圧にも力が入れられている。NPAは長らく前に非合法化されたフィリピン共産党(CPP)の軍事部門で、歴史は古い。最近ではフィリピン政府とCPPが2016年に停戦合意を結び、ようやく和平実現かと思われたものの、翌2017年2月にはドゥテルテ率いるフィリピン政府が停戦を破棄し、掃討作戦に転じている。もしかしたらドゥテルテ個人としては共産党勢力からの選挙協力も受けており平和的に解決したかったのかもしれないが、「テロ組織」という点ではNPAはアブサヤフやマウテグループ等のIS系勢力と同列にくくってしまう方が、国際社会からの協力も取り付けやすい等々あるのかもしれない。とにかく現政権の重点課題は治安の向上で、今後もこの方向は続くとみてよさそうだ。

↑大宅壮一ノンフィクション賞受賞作家、野村進のデビュー作。おもしろかったです。

ミンダナオの先住民虐殺

フィリピンの新聞を見ていると、けっこう難しい単語が出てくるのでいつも学ぶことがある。ただ、内容的に面白くないことが大半なのが問題。そんな中、目を引いたのは「ミンダナオの先住民虐殺」の記事。

日本語は、まにら新聞等で。
http://www.manila-shimbun.com/column/opinions/series219596.html

口を出すだけとはいえ、国連も出てくるような事態。今さらどうしてこんなことが起こるのか。というか、必要なのか。結局は、大企業が教育レベルが低くて立場の弱い人を虐げているだけのように見える。ということは、これは差別というより、単に政治力の問題。ゴミ山や川辺等にいる不法占拠者と同じ扱いを受けているみたいだ。

となれば問題は、犯罪行為をしっかりチェックする機構の不在であって、先住民をどうこうする話ではないように思われる。おそらく、ちょっと昔だったらまだNPA(共産ゲリラ)の縄張りがあって大企業が入ってこれなかったところ、最近はめっきり弱体化しているとかそういうのが原因ではないだろうか。国軍がNPA掃討作戦をやるのは別にそこに暮らす住民を守るためなんかではなくて、大企業が入ってこれるようにする地ならしをしているにすぎないというわけだ。21世紀になってもそんな調子なんだろうなぁ。

それは逆に、NPAの存在理由でもあるだろう。政府に対する信用のなさ。それにつきると思う。もしもフィリピン政府がもっとちゃんとしていたら、というのは現実的ではない仮定になってしまうけれど。

フィリピンの新人民軍(NPA)

先週ぐらいに、比共産党の軍事部門、新人民軍(NPA)の指導者、「コマンダー・パラゴ」ことレオナルド・ピタオが当局によって殺害された。私の素人目にはこれで潮目が変わるのでは、と思うのだが実際はどうだろう。

コマンダー・パラゴはずっと懸賞金付きで指名手配されていたわけだが、今でも支持者がけっこういるみたいで、ダバオでは葬儀はこんな感じだったらしい。
http://www.rappler.com/nation/98884-kumander-parago-pitao-funeral-davao?utm_content=buffer99f49&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

数年前には娘が当局によって殺されていたらしい。

日本の外務省のウェブサイトにはNPAについての言及があり、日本の企業が襲撃された、とかいったことも年表に整理してくれている。

http://www.moj.go.jp/psia/ITH/organizations/ES_E-asia_oce/NPA.html

同サイトによると、

「フィリピン国軍は,NPA,CPP及びNDFを同一勢力とみており,2011年末時点の勢力を約4,000人としている。」

「2010年の政権交代により,NPAはアキノ新政権との和平交渉を再開したが,両者の隔たりは大きく,2013年4月,フィリピン政府は,CPP(NPA)との和平交渉を断念すると発表した。」

ということだった。ちなみに日本語版のウィキペディアの情報も、上記をもとにしていると思われる。

ネットでさっと入手できる日本語の情報はこんなところで、あとは論文とかを探していくしかなさそうだが、そんなに興味はないのでここで辞めておきます。

そういえば、大宅壮一ノンフィクション賞受賞作家野村進のデビュー作が『フィリピン新人民軍従軍記 -ナショナリズムとテロリズム』で、これはNPA全盛期に近い時代だったのだろう、読んでも悲壮な雰囲気はさっぱり感じられない。また、サブタイトルに「テロリズム」という文言があるが、これも昨今ではニュアンスが様変わりしてしまっており、うかつに本のサブタイトルになどできない言葉になってしまった。

『フィリピン新人民軍従軍記 -ナショナリズムとテロリズム』 野村進 (1981=2003)講談社α文庫

ともあれ、読み物として面白いので、お勧めです。ノンフィクション大好き。