アメリカで2001年の同時多発テロ事件が起こる数か月前、フィリピンのパラワン島にあるドス・パルマス・リゾートをアブサヤフが襲撃し、アメリカ人3名と、20名弱のフィリピン人を拉致してバシラン島に引き上げていった。当時、アブサヤフは既に拉致事件を何度か起こしていたが、アメリカ人が人質にとられた上にその後911が起きたので、オサマ・ビン・ラディンとつながりのあるアブサヤフによるこの事件は国際的な注目を集めたようだ。
(参考:アブサヤフの起こした拉致事件や爆破事件などのサマリー↓(英語記事))
https://www.gmanetwork.com/news/news/content/154797/abu-sayyaf-kidnappings-bombings-and-other-attacks/story/
さて、人質になった3名のアメリカ人の中には生き残った方が1人だけいて、アメリカに戻った後に手記を出版し、かなり反響があったようだ。その後、フィリピンの監督によって2013年に映画化されている。本は日本語へ翻訳されていないようだが、映画の方は字幕あり。
“In the presense of My Enemies” Gracia Burnham with Dean Merrill (2003)
Burnham, Gracia(著), Merrill, Dean(寄稿)
Tyndale Momentum (2012-02-24T00:00:00.000Z)
¥1,739
「囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件」(2013)
イザベル・ユペール(出演), ラスティカ・カルピオ(出演), キャスリーン・ムルヴィル(出演), マーク・ザネッタ(出演), ティモシー・マバロット(出演), ブリランテ・メンドーサ(監督)
アミューズソフトエンタテインメント (2013-12-20T00:00:01Z)
¥2,500 (中古品)
たまたま拉致されたこのアメリカ人は、キリスト教(プロテスタント)の布教組織のメンバーで、書籍のタイトル自体も聖書の中の一説らしい。書籍では、一年超に及ぶバシラン島の山中をさまよいながらの人質生活の様子やアブサヤフがどんな人たちだったかを記しただけでなく、キリスト教徒としての内面の話が多い。全体として良書だと思う。
アブサヤフについての著者の話はもちろん、救出されたところで終わってしまうが、その後の顛末をネットで追ってみると、アブサヤフのリーダー格はその後の数年以内に掃討作戦で殺害あるいは逮捕された模様。そして逮捕された者については当然裁判となるわけだが、公判中にフィリピンでは死刑が廃止され、最高刑が終身刑になってしまったらしい。そういうわけで、2011年に最高裁で終身刑が確定した。ちなみに地裁の判決は2004年、高裁(控訴裁判所)の判決は2008年に出たという。
(参考:最高裁判決↓(英語記事))
Supreme Court affirms life terms on Abu Sayyaf members
(追記:この事件については、ネットフリックスの”Captive”シリーズで2016年から公開されているドキュメンタリーもある)