日本語を教えるスキルの一部は、実はコミュニケーション全般に応用の効くもので、ようは「聞き取りやすく、わかりやすく話す」です。自分の話しているのがどう聞こえるのかは、録音してみれば簡単にわかります。ということは、練習も簡単にできるということです(やる気さえあれば)。
さて、私は日本語教師をオンラインで続けていますが、オンラインでは一対一なので、学校のような教授法スタイルは不適です。チューターとして必要な能力は、柔軟性だと日々感じています。
能力とは、知識と技能。知識は座学で勉強して身に付きますが、技能は実際にやってみないとできるようになりません。それに「できる、できない」というのはオンかオフではなく、程度の問題です。
さて以下では、日本語学習者と言語交換(ランゲージエクスチェンジ)するとき、または単に日本語初級者と会話するときの方法について7つの提案です。
完璧である必要はありませんが、心得として知っておいて損はないと思います。ただ、もっとも大事なことは、話していて面白いと相手に思ってもらえること。それに比べれば、ここに書いてあるのは表面的テクニックにすぎません。
1. ゆっくりはっきり話す
たとえ活舌がよくでも、「えー」とか「あー」とかがあまりに多いと話がわかりづらくなります。テレビの人では、池上彰とか林先生なんかが私の理想です。
2. 単純な語彙と構文、話題を選んで話す
単純な語彙とは、一般的には熟語や漢語(漢字2文字以上の言葉)を減らして、和語を使うということで、例えば「憤慨する」の代わりに「怒る」を使う、など。
ちなみに中国人が相手なら、チャット(筆談)では熟語、漢語はかなり使えます。韓国人は世代によります。
次に単純な構文とは、たとえば「昨日電話に出られなかったのは、子供が私を必要としていて充電する暇さえなかったからです」というかわりに、「昨日は忙しくて電話できなかった」というようなことです。
まわりくどい表現を避ける、ということです。そして、話題を選ぶとは、日本人しか知らないようなはやりの言葉や芸能ネタとかからの引用などを避けることです。
3. 通じなかったとき、言い換えの前にもう一度繰り返して言ってあげる
よかれと思って他の言葉で言い換えてあげても、かえってわけわからなくなる場合が多々あります。単純に聞き取れなかっただけかもしれないので、まずは同じセリフをもう一度言ってあげましょう。
4. 質問は答えやすいものを
「はい、いいえ」で答えられるように聞く(「どうして」や「どう思うか」は聞かない)。そして、相手が知っていることを聞くのがいい答えを得る近道です。
5. 相手が話すのを待つ
相手のペースに合わせてください。イライラは禁物。
6. 相手の言い間違いの指摘はほどほどに
会話の流れを折らないようにしましょう。バカにするのは厳禁。ジョークのつもりでも相手は傷つくことがあります。自分だったらどう感じるか、と考えてみればわかることです。
7. 講義をしないように
これは特に言語交換の場合です。学習者が話すこと(アウトプット)が大切です。言い換えると、相手に話させること。ネイティブが一方的に話すのを聞くだけなら、テレビやyoutubeでいいのです。
以上です。逆に自分が外国語を習っているのだったら、特に初心者だったら、上記が比較的できている人を選ぶとやりやすいです。
コミュニケーションが成り立たないときは片方が悪いのでなく、相手も悪いです。初心者だからと言って遠慮することなく、相手が悪い!と言っていいのです。
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