ここ数ヶ月、いわゆるBOPビジネスとかっていう本をいくつか読んできて、ようやく辿り着いたこの本。
C.K. プラハラード C.K. Prahalad
英治出版
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「ネクスト・マーケット[増補改訂版]」J.K.プラハラード(2010)
もともとは2004年が英語版の初版ということだが、こんな本が10年前に出ていたなんて。。という内容。
もちろん日本でもアンテナが立っている人はかなり早い時期に触れていたのだろうけど、少なくとも俺の周りにはこの本を読んだ人はそういないことから考えると、俺も含めて文字通り10年遅れている、ということだろうか。ため息が出る。
この著者がBOPということを言い出したそうで、それについては日本語のいろんな本でも触れられている(例えばちょっと前に紹介した野村総研の本とか。)。しかしながら、日本語で書かれた他の本はいかに日本の製品を売り込むかみたいな路線ばかりだったが、本書「ネクスト・マーケット」に出てくる話は、次元が違う。
たとえば、ブラジルの小売「カーザス・バイーア」は、家具等をBOP層に無担保の信用販売するモデルとして紹介されているが、これなどは扱っている商品はまったく普通の家具である。イノベーションはその方法であって、無担保の信用販売は、もはや小売業が自前でやっているマイクロクレジット。そしてすごいのはちゃんと履行させ、それで利益を業界一になれるほど上げていることである。
同様に、インドの某州政府の電子政府化によるサービスの向上と汚職の撲滅など、スケールがでかいのなんの。こういう動きは、うかうかしているとむしろ日本の方が遅れて行ってしまう、というのがポイント。特に日本は職員のモラルが高いので、電子政府化は汚職撲滅の手段としては説得力がない。
本書は10年前の本なので最近のことは書いてないが、似たような例としては、たとえば教科書の電子化なども似ている。日本では既存の出版業界が邪魔してできないことが、逆に途上国では一足飛びにできてし、まう。出版業界のことも、一種の「グリーンリープgreen leap」と言えるかもしれない。
気になるのは、「ネクスト・マーケット」の出版以来、世界はどう変わってきているんだろうかということ。もしプラハラードが生きていたら、どんな評価を出すのだろうか。変化はダイナミックに各地で起こっているようでいて、それはまだまだ点に過ぎず、総体としてはそんなに変わったような気がしない、と俺は思う。まだまだやれることはあるだろうし、今だからようやく可能になってきていることもあるだろう。
未開拓な分だけ、これからも面白いチャレンジにでありつづけるに違いない。やはり、途上国に行こう!