タガログ語の”hugot”とは

タガログ語の日本語解説はあまりなく、かつ若者言葉となると大学の先生方が書くような解説には世代的に載っていない。
“hugot”もそのひとつ。もともと”hugot”には、um動詞”humugot”で「引く、引き抜く」という意味があったが、メディアの影響によって新しい意味が定着したようだ。

定義としては、だいたい「メッセージ性があり、ひねりの効いた一文」という感じだと個人的には理解しているが、例えばitaki.com(言語学習ウェブサイト)の質問コーナーの2015年の回答(参照)や、hinative(言語学習者の質問にネイティブが回答するウェブサイト。日記添削サイト”lang-8.com”の後継)の2017年の回答(参照)には歌詞だったり「(格言・名言としての)引用」も含む、とある。そんな感じ。

初出はどうやらコメディアンのバイス・ガンダ(日本でいえば往年の明石家さんま的なトーク力のあるタレント)のようだが、もともとはライバルであるGMA(民放)の番組でやっていたようだ。その頃は”pick-up line(s)”と呼ばれていたものが”hugot line(s)”となり、今に至ると思われる。

ちなみに、現大統領のドゥテルテが当選した大統領選にも出馬していた、故ミリアム・サンティアゴ上院議員はこの名手であり、本も出している。

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例として、2013年のバレンタインデーにマニラのフィリピン大学で行ったスピーチの動画が以下↓

その後、”hugot”と呼ばれるようになり俺がダバオにいた2015年には既に流行っていた。ということで、流行りだしたのは2013から2014年頃だろう。

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サンボアンガ市のモスクで爆破事件、2名が死亡

1月27日にスールーのホロの教会で爆破テロがあったが、翌日夜には犯行グループの一人と見られるアブサヤフのメンバーが、ミンダナオ南西部のサンボアンガ市内で警察と撃ち合いになり死亡した。

(参考↓英語記事)
https://www.sunstar.com.ph/article/1785124/Zamboanga/Local-News/Abu-Sayyaf-bandit-killed-in-a-shootout

上記記事によれば現場は市内のサント・ニーニョ・ビレッジと記載されており、おそらくユーベンコモールのあるプティックにあるサント・ニーニョ・ビレッジだと思われる。

さらに、今日1月30日には、サンボアンガ市内のモスクでグレネードによる爆破事件が起き、2名が死亡、4名が負傷した。事件が起きたのは市の南タロンタロンというバランガイで、海岸に近くイスラム教徒が比較的多いエリア。

(参考↓英語記事)
https://www.philstar.com/nation/2019/01/30/1889418/armm-gov-zamboanga-mosque-blast-highest-form-cowardice-obscenity

犯人は不明。先日の事件を受けてキリスト教徒による報復と見せかけたいテロリスト側の工作か、あるいは今回のバンサモロ自治政府(BARMM)に関連するイスラム教徒同士の紛争か、はたまた単純に爆弾の暴発か。

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スールーの首都ホロの教会で爆破テロ

今朝、ミンダナオ島の南西、マレーシアとの国境に近いスールー州の州都ホロにあるカトリック教会でミサの最中に2つの爆弾がさく裂し、多数が死亡・負傷した。本日夕方までに確認された死者数は20名、負傷者も81名にのぼっている。なお、中には国軍兵士も含まれている。(追記:1月30日時点では、死者21名、負傷者111名)

(参考:英語記事↓)
http://cnnphilippines.com/news/2019/01/27/jolo-town-cathedral-explosion.html
https://newsinfo.inquirer.net/1078076/jolo-sulu-blast-bombing-death-toll-injured-news
https://www.telegraph.co.uk/news/2019/01/27/twin-blasts-church-philippines-kills-19-injures-48/

この事件はおそらくというかまず間違いなく、先日成立したばかりのバンサモロ基本法(BOL=Bansamoro Organic Law)に反対する者の仕業。スールー州はMNLFの拠点であり、MNLFが今回のバンサモロ基本法の成立過程に参加していないだけに反対の立場。今月の住民投票でも、ほとんどの自治体が賛成する中でスールー州(とバシラン州の首都のイサベラ市)だけは反対多数という結果が出た。

今回のテロ事件は、賛成票を投じたとみられるグループに対する反対派からの報復ではないか、という見方もある。先の投票でも、かなりの数の有権者が本当は賛成票を入れたかったけれども脅されてあるいは恐怖にかられて反対票を投じたのではないだろうか。

国レベルではこの程度のテロ事件は想定内ということだと思うが、渦中の住民としてはたまったものではない。2022年にバンサモロ自治政府が発足すればますますMNLFの立場は弱くなっていくのだろうが、これからもまだまだ反対派のテロはなくならないのではないかと思う。そうなると、サンボアンガ市を始めとする比較的治安の保たれている地方中心都市に(イスラム教徒も含めて)島民が流入していく構造はやはりこれからも変わらないだろう。サンボアンガ市はすごい勢いで人口が増えており、しかもイスラム教徒の比率が上がっている。これに伴って言語のバランスも当然変わってくるので、サンボアンガのチャバカノ語を細々と研究し続けている自分としては今後も目が離せない。

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フィリピン、カンボジアとベトナムの最低賃金の比較

急に思いついて、現在のフィリピン、カンボジアとベトナムの最低賃金を比較してみる。

1.フィリピン
2018年11月
マニラ:日額最低賃金が非農業分野は500~537ペソ(約1050円~1127円、1ペソ=約2.1円)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/11/e2c50df274360288.html

2018年8月
セブ:386ペソ(約811円、1ペソ=約2.1円)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/06/b0149cdcba0ba701.html

1カ月22日で換算すると、マニラが11,000~11,814ペソ(23,100~24,808円)、セブが8,492ペソ(17,833円)となる。

2.カンボジア
2019年1月1日から月額182ドル(約2万500円)
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/181029/mcb1810290500005-n1.htm

3.ベトナム
2019年1月1日からハノイ市、ハイフォン市、ホーチミン市を含む地域1が前年比5.0%増で418万ドン(約2万482円、1ドン=約0.0049円)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/12/9ddb9d3a5985ce07.html

レートの基準日がまばらなので不完全だが、3カ国を比べるとマニラが一番高そうだ。さらに、興味深いことにベトナムよりカンボジアの方が若干高く見える。ただ、賃金とは別に福利厚生の手当てのようなものが法律で義務付けられていたりして、実際に受け取る額は最低賃金と同じにはならず、結果的にカンボジアよりベトナムの方が高くなるとのこと。そりゃそうだ、ベトナムの方が経済力が上なのだから。

その上、国によって物価が違うので、賃金の額だけ見てもどっちの方が生活が豊かかは言えない。インフレは国によりまた時期によりそれぞれで、たとえばフィリピンでは2018年から「加糖飲料税」(いわゆる砂糖税)を始めた結果、庶民がしょっちゅう飲んでいるソフトドリンクが高くなってしまったり、またコメもうまくコントロールできず、ついに政府による買い上げ米の制度(いわゆるNFA米)を諦め、輸入自由化に踏み切らずを得なくなった。結果的に、2018年のインフレは周辺国よりすごかった。

(参考)「甘い清涼飲料に「砂糖税」 アジアで広がる」日経新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28920420T00C18A4MM0000/
(参考)「フィリピン、コメ輸入を自由化 不足で民間参入容認」日経新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35773530W8A920C1FF1000/

大晦日にコタバトのモールで爆破テロがあった件

去る2018年12月31日に、ミンダナオ島中央にあるコタバト市内のサウスシーズモール(South Seas Mall)の入り口付近で爆破テロがあり、2名が死亡、34名が負傷した。この犯行は軍によって先にテロリスト側の7名を殺害されたことへの報復と考えられているが、今回の犠牲者の中にはバンサモロ基本法の起草にかかわっていた者がいることから、もしかしたらこの人物を狙った爆破テロかもしれない。なお、犯人は1月2日夕方の時点でも特定できていない。

コタバトでは2013年にも爆破テロがあり、8名が死亡している。

ミンダナオの戒厳令は去る12月にもう1年延長されたばかり(参照)。2018年8、9月にはスルタン・クダラット州や南コタバト州ジェネラルサントス市で爆破テロがあったところから見るに、2017年のミンダナオ西部マラウィ市での戦闘が終わってから、テロリスト側の活動地域は少し東にシフトしている(参照「ミンダナオ中部スルタン・クダラット州で爆発テロ」「再びミンダナオ中南部スルタン・クダラットで爆破テロ」「今度はジェネラルサントスで爆破テロ」)
https://www.bworldonline.com/btc-worker-among-2-killed-in-cotabato-bombing/
https://www.independent.co.uk/news/world/asia/philippines-bombing-latest-mall-attack-cotabato-isis-dead-injured-rodrigo-duterte-a8705396.html
https://news.abs-cbn.com/news/01/02/19/cotabato-bomb-blast-an-act-of-terror-pnp

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「スペイン語の世界」の中のチャバカノ語

日本語の文献でチャバカノ語への言及を見ることは非常に少なく、特に学者が書くものはほぼないといってよい。長崎県立大学の荻原寛名誉教授は研究対象にチャバカノ語も含めているようだが、ネットで見られる論考はイスパニカに掲載されている「マニラ湾沿岸部のスペイン語系クレオールをめぐって」(1995)ぐらいしかない。

そんな状況の中、今年出版されたスペイン語関係の一般書を読んでいたらチャバカノ語について紹介されているページがあったので引用してみる。

「スペイン語の世界」岡本信照(2018)慶応義塾大学出版会

スペイン語の世界
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91-92p

フィリピンのチャバカーノ(スペイン語xタガログ語/セブアノ語)
 東南アジアにもスペイン語が存在する。その地はフィリピンである。チャバカーノ(Chabacano)とは、スペイン語とフィリピン現地語のいくつかとの接触言語の名称である。チャバカーノ語話者が最も多いのはミンダナオ島のサンボアンガという都市で、約50万人のネイティブ話者がいると推定される。農村部へ行けば、チャバカーノのモノリンガルも存在するという。ただし、最近は衰退の一途にあり、ミンダナオ島にも標準フィリピン語(タガログ語)が普及しつつある。その他、ルソン島マニラ湾沿岸の都市カビテでも話されているが、サンボアンガの変種とは異なる。例えば、語彙構成に関して言えば、カビテ方言はスペイン語起源のものが93%を超えるのに対し、サンボアンガ方言は86%とやや少なくなる。つまり、タガログ語やセブアノ語といった現地語由来の語彙の割合は、サンボアンガ方言の方がやや高い。
 ”chabacano”という語は本来「下品な」を意味するマイナス・イメージを帯びた形容詞である。それゆえ、その由来においてはあまり名誉ある名称とは言えないが、フィリピンにおけるクレオール・スペイン語の言語名として今や市民権を得ている。
 このクレオール語がいつどこで発生したかについては諸説がある。1つは、17世紀に香料諸島のテルナテ島(現インドネシア領)で発生したという説だ。ここは、香辛料の商取引をめぐってスペイン、ポルトガル、オランダが争った場所である。16~17世紀の東アジア海域では通商の共通語としてポルトガル語とマレー語が用いられており、やがてこの2言語が混淆したピジンが産み出され、ポルトガル人のみならず、オランダ人や英国人も用いたという。このポルトガル語基盤のピジンがさらにスペイン語と接触した結果がチャバカーノの萌芽であり、17世紀半ばにテルナテ島に住んでいたスペイン語(=チャバカーノ)話者がマニラに移り住むようになってからフィリピンで広めたというのだ。この説の支持者は、サンボアンガ方言を後の18世紀になってから派生した変種と位置づける。つまり、チャバカーノ諸方言一元論を唱えているわけである。2つ目は、18世紀のミンダナオ島に起源を求める説である。1718年、スペインは一度放棄したことがあるサンボアンガをふたたび占領した。この時期、この土地の先住民は不完全ながらもスペイン語を話すようになり、これがチャバカーノの始まりだという。こちらの説に賛同する専門家は、ミンダナオ島の方言とルソン島の方言はそれぞれ別の過程を経て確立したとする多元論で説明しようとする。

岡本が自分で調査して93%やら86%といった具体的な数字を挙げているとは思えないので、誰かの研究成果の孫引きなのではないかと思う。本書は2018年の作だが、上で言及したイスパニカ掲載の荻原の論考と比べてみて、その起源の探求について特に進んだ点は感じられない。

気になるのは、「最近は衰退の一途にあり」というくだり。一直線に衰退しているような書き方だが、カビテやテルナテの変種はともかく、サンボアンガのチャバカノ語についていえば話者数が数十万おり、当地の小学校の母語言語としてカリキュラムにも入っているところからすると、乱暴な言い方だと思われる。フィリピン語(タガログ語)は普及しており、もはやチャバカノ語モノリンガルの人は若い人にはいないが、サンボアンガでは、今後国から禁止されでもしない限り容易には話者は減っていかないと思う。

(おまけ)
参考までに、アキノ政権下で導入された、現行の「母語を基礎とした多言語教育(MTB-MLE)」の資料(英語)をいくつかリンクしておく。

https://www.philstar.com/headlines/2013/07/13/964902/deped-using-seven-more-dialects-under-k-12

ミンダナオの戒厳令がまた延長された

昨日、ミンダナオに敷かれている戒厳令の再延長が上下院で可決された。期限は2019年末まで。

ドゥテルテ政権下でのミンダナオの戒厳令は2017年5月下旬に始まり、今まで約1年半。延長はこれで3度目。

https://news.abs-cbn.com/news/12/12/18/congress-extends-mindanao-martial-law-until-end-of-2019

上の記事では戒厳令で可能になる具体的な中身は書いていないが、軍の配置の増強が可能になるのか、俺には具体的なことはよくわからん。

ちなみに、上の記事でも登場しているように、前々大統領のアロヨはすっかり国会議員として復活している。ひとつ前のアキノ大統領の間は首にサポーターをつけて病人ぶっていたが、大統領が変わるとすっかり治ってしまうようだ。

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