16世紀の日本でのキリスト教布教とその後の「隠れキリシタン」

自分はもともと歴史や宗教に興味があったのかもしれないが、フィリピンに住んだりタガログ語やチャバカノ語をはじめとするフィリピン諸語を学ぶ中で、キリスト教は避けて通れません。内容についてはさほど興味ないものの、社会にどのように広がったのかや、他の地域と比べてどう違うのか、などの俗的なことは大いに気になるわけで、ひいては同じ大航海時代に日本に広がったキリスト教についても同様の興味があります。

世界遺産になった「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は、いわゆる隠れキリシタンをフィーチャーしており当時は日本人の間にもこの特異な史実についての関心が高まりました。ただ、下の読売新聞の記事にもありますが、隠れキリシタンの信仰対象は一般に思われているのとはちょっと違うところがあるようで、その道の研究者が書いた本がこの機にいくつか出版されたのは、ありがたいことです。

https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/review/20180409-OYT8T50031/

今回私が読んだのは、長崎のカトリック系大学で長年教授を務め退官した学者、宮崎賢太郎氏のもの。

「潜伏キリシタンは何を信じていたのか」宮崎賢太郎(2018)
4044003459

研究書でなく、誰でも読めるように書かれていて、かつ、普通の日本人が宗教について改めて考えることができるようキリシタンの話題以外にも日本における宗教について触れられておりとても面白かった。

そのうち中園成生著『かくれキリシタンの起源』の方も読んでみたい。

2001年のアブサヤフによる、パラワンのリゾートを襲った拉致事件とその後

アメリカで2001年の同時多発テロ事件が起こる数か月前、フィリピンのパラワン島にあるドス・パルマス・リゾートをアブサヤフが襲撃し、アメリカ人3名と、20名弱のフィリピン人を拉致してバシラン島に引き上げていった。当時、アブサヤフは既に拉致事件を何度か起こしていたが、アメリカ人が人質にとられた上にその後911が起きたので、オサマ・ビン・ラディンとつながりのあるアブサヤフによるこの事件は国際的な注目を集めたようだ。

(参考:アブサヤフの起こした拉致事件や爆破事件などのサマリー↓(英語記事))
https://www.gmanetwork.com/news/news/content/154797/abu-sayyaf-kidnappings-bombings-and-other-attacks/story/

さて、人質になった3名のアメリカ人の中には生き残った方が1人だけいて、アメリカに戻った後に手記を出版し、かなり反響があったようだ。その後、フィリピンの監督によって2013年に映画化されている。本は日本語へ翻訳されていないようだが、映画の方は字幕あり。

“In the presense of My Enemies” Gracia Burnham with Dean Merrill (2003)

In the Presence of My Enemies (English Edition)
Burnham, Gracia(著), Merrill, Dean(寄稿)
Tyndale Momentum (2012-02-24T00:00:00.000Z)
5つ星のうち4.8
¥1,739

「囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件」(2013)

囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件 [DVD]
イザベル・ユペール(出演), ラスティカ・カルピオ(出演), キャスリーン・ムルヴィル(出演), マーク・ザネッタ(出演), ティモシー・マバロット(出演), ブリランテ・メンドーサ(監督)
アミューズソフトエンタテインメント (2013-12-20T00:00:01Z)
5つ星のうち4.2
¥2,500 (中古品)

たまたま拉致されたこのアメリカ人は、キリスト教(プロテスタント)の布教組織のメンバーで、書籍のタイトル自体も聖書の中の一説らしい。書籍では、一年超に及ぶバシラン島の山中をさまよいながらの人質生活の様子やアブサヤフがどんな人たちだったかを記しただけでなく、キリスト教徒としての内面の話が多い。全体として良書だと思う。

アブサヤフについての著者の話はもちろん、救出されたところで終わってしまうが、その後の顛末をネットで追ってみると、アブサヤフのリーダー格はその後の数年以内に掃討作戦で殺害あるいは逮捕された模様。そして逮捕された者については当然裁判となるわけだが、公判中にフィリピンでは死刑が廃止され、最高刑が終身刑になってしまったらしい。そういうわけで、2011年に最高裁で終身刑が確定した。ちなみに地裁の判決は2004年、高裁(控訴裁判所)の判決は2008年に出たという。

(参考:最高裁判決↓(英語記事))

Supreme Court affirms life terms on Abu Sayyaf members

スールーでは国軍によるアブサヤフの掃討作戦が続く

今回は拉致事件ではないですが。

去る2020年4月23日、スールー州のパティクルで国軍がアブサヤフと衝突し、この時点でアブサヤフ側は6名が死亡、一方で国軍には死亡者は出なかった。

参考、英語記事↓
https://www.gmanetwork.com/news/news/regions/735283/6-abu-sayyaf-bandits-dead-8-soldiers-hurt-in-patikul-clash-military/story/

これに先立ち、18日には現在のアブサヤフのリーダー格の一人であるサヒロンの、孫が死亡した模様。
https://www.gmanetwork.com/news/news/regions/734648/soldiers-killed-kin-of-abu-sayyaf-group-leader-sahiron-military/story/

さらにその前日の4月17日には、スールー州のパティクルで国軍がアブサヤフと衝突し、この時点でアブサヤフ側は3名が死亡、一方で国軍は11名が死亡した。
https://www.rappler.com/nation/258293-soldiers-killed-wounded-sulu-clash-abu-sayyaf-april-17-2020

このように現在は主にスールー州で作戦が続いている。サンボアンガ市から見てひとつ手前のバシラン州は既にしばらく前から制圧されているようで、治安も良くなっていると思われる。

ところで、新型コロナウイルスに関してはサンボアンガ市ではこれまで10名そこらしか陽性が確認されておらず、かつそのうちの2名は死亡している。今日の時点では5月以降GCQ(一般コミュニティ検疫)となる予定。ただし市長はECQ(強化されたコミュニティ検疫)の延長を求めているよう。

スールーで医師がアブサヤフに拉致されたが翌月に救助された件

このブログをなかなか更新できてないので少し過去のことだが、備忘録としてメモ。

2020年2月4日に、スールー州の州都ホロで開業している医師Dr. Daniel Morenoが自宅近くでアブサヤフに拉致された。
(英語記事↓)
https://www.benarnews.org/english/news/philippine/doctor-abducted-02052020121221.html

その翌月3月24日、国軍の作戦によって彼はスールー州インダナンで救助された。
https://www.rappler.com/nation/255838-kidnapped-doctor-rescued-sulu-march-2020

最近、アブサヤフはかなり弱くなっているように見受けられるが、スールーでは戦闘がいまだに続いている。一方、バシラン州の方はかなり平和になっているらしい。

タガログ語の無料オンライン教材

いろんなことがネットで調べられるようになり、youtubeやスマホのアプリで学ぶことができるようになりつつあるが、ことタガログ語に関しては簡単ではない。話者数が数千万いるわりには、外国語としてのタガログ語を学べる機会は驚くほど限られているように思われる。

ひとつには、教材が乏しい。内容的に信頼性のあるのは東京外大のモジュールだが、独習の足しにはできても主教材とするには難しい。なにより、説明が簡単ではない。(なお、東京外大のモジュールをまとめたようなPDFはなぜか全然違うウェブサイトに載っている(参考))

英語ができる人ならアメリカの大学のウェブサイトなどもう少しチョイスはあるが、どうも大学のウェブサイトに出てくるタガログ語は古いというか、すぐに使えそうな単語を優先的に紹介はしていないようだ。

他の日本語サイトでは、手作り感のある「わかりやすいタガログ語」は、よりやさしく解説してくれているものの、練習問題がないのでやはり参考程度。

私も教材を作ってみることにした背景はそういうところにあった。もともとオンラインレッスン用に教材を作っていたのだが、独習用にも役立ててもらえればと思い、無料公開することにした。自分のグループのウェブサイトに掲載してあるので、練習問題を答え付きでほしい人は、ダウンロードしてほしい↓
https://sites.google.com/view/philskamata/

さて、私が感じるネット上でタガログ語を学ぶのが他の言語に比べて難しい理由のもうひとつは、タガログ語の動画がたくさんあってもそれにタガログ語字幕がついたものがほとんどないということ。タガログ語の音声のリスニング練習をするのに、タガログ語字幕がついたものは答え合わせのために有効と思うのだが、残念ながらyoutubeでは全然見つけられない。当面は、SalamaTraのような機械翻訳アプリの訳文に音声読み上げをつけてくれる機能を利用してリスニングをしていく程度しか手はないと思う。

サンボアンガ・デル・スル州でイギリス人とフィリピン人妻が拉致された件

数日前のことになるが、10月4日夕方に、サンボアンガ・デル・スル州のトゥクランという町で、当地でリゾートを経営する70代のイギリス人とフィリピン人妻が何者かによって拉致された。4人の男が拳銃を突き付け、ボートで待機していた2人と合流し海に去って行ったという。

(英語参考記事↓)
https://www.rappler.com/nation/241785-gunmen-abduct-couple-zamboanga-del-sur

おそらくISIS系のテロリストの仕業ではないかと思われるが、現在まで犯行声明は出ていないという。おそらく、実行犯が身柄をアブサヤフ等に引き渡し、そこから身代金交渉が始まるのではないだろうか。

ところでアブサヤフのニュースは最近あまり聞かなくなったが、同10月4日にはアブサヤフのサブリーダー格が、ケソン市に潜伏していたところを逮捕された。

(英語参考記事↓)
http://www.manilastandard.net/news/national/306638/abu-sayyaf-sub-leader-arrested-in-quezon-city.html

この記事を読むと、彼はアジャン・アジャン(Ajang-ajang)というサブグループの所属だったことがわかる(アブサヤフは、ひとつのグループというより緩やかなネットワーク)。記事では、はじめはサンボアンガ市にいた際に月1万ペソの報酬を約束されて参加した、とあり、やはりこのような若者がリクルートされていくのは地方の貧困が背景にあるように思われる。

後日追記:
この二人は同年11月25日に救助された。
(英語参考記事↓ なお、この記事ではTukuranがZamboanga del Norteの南にある、と書かれているがZamboanga del Surの間違いである)
https://www.aljazeera.com/news/2019/11/philippine-troops-rescue-couple-kidnapped-abu-sayyaf-191125032516299.html

それはそうと、この夫妻、実はリゾートだけではなく小さな大学も経営していた。手作り感あふれるウェブサイト、ある意味すごい↓
https://hyronscollege.page.tl/
フィリピンでは、広報ツールとしてはウェブサイトよりはフェイスブックの方が重要なんだろう↓
https://www.facebook.com/pages/Hyrons-College-Philippines-Tukuran-Zamboanga-Del-Sur/869426599750647

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海外に住む家族への送金で日本の所得税・住民税控除

外国人に限らないが、海外(日本以外)に親族または結婚相手の親族が住んでいて、かつその人(たち)に日本から生活費として送金している場合、送っている人は親族を養っていることで所得税・住民税から控除ができる。もし外国人と結婚している人で、その結婚相手の所得がほとんどなければ、配偶者(夫または妻)が控除の対象になる。

ただし細かい条件がいくつかある。
1) 送金が銀行や合法的な送金業者を通じて行われていて、相手の氏名が送金のときの書類で証明できること (現金を一時帰国のときに手渡すのはダメ)
2) 送金している人と扶養家族との関係を証明する出生証明書などが準備できること
3) 養われている人が「税法上の親族」であること (「税法上の親族」とは、配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族です。例はこちら(PDF)を参照)
4) 養われている人が所得があまりないこと (食べていけるだけの収入がある人はそもそも養う必要性がないため)
5) 養われている人の年齢が16歳以上であること (現行法のもとでは、15歳未満は扶養控除の対象とならないため)

1)と2)は海外に住んでいる扶養親族の証明のための決まりで、数年前に導入された(それ以前は証明の必要はなかった)。3)~5)は日本国内に扶養親族がいる場合にも必要な条件。この制度について、詳しくは国税庁東京・目黒区のウェブサイトなどに情報がある。

さて、親族関係を証明する出生証明書をはじめ、外国語で書かれた書類は日本語訳をつけなければならないが、銀行や送金業者から入手する送金記録の書類に関しては、日本語で出すところが多くあり、翻訳の手間が不要でよい。しかし、外国人向けの送金業者でかつ店舗で受け付けしているような業者は、日本法人にもかかわらず日本語でその書類を出してくれないところも多いようだ。

また、銀行は送金業者よりも一般的に送金手数料が高い(それでも昔よりはずいぶん安くなった)。

これらを考慮すると、現在のところ両替レートと手数料が一番良心的で、かつ日本語で送金記録が入手できるのはオンライン送金サービスの「トランスファーワイズ」と思う。この会社は、いまやIT立国で有名なエストニア発の企業で、スカイプで働いていた人などが創業した。

これまで何年か使っていて全く不便なく使えているので、オススメできます。最近送金手数料が若干上がったけど、それでもまだ他社より安い)。

右のリンクは私からのトランスファーワイズ紹介リンクで、ある程度以上送金すればそのときの送金手数料が無料になる特典がついています(こちら)。

なお、扶養親族は人数分だけ控除される額が増えるし、その人に障害があったり、19歳以上23歳未満だと多く控除される。

控除があるとその分だけ課税される額が減るが、控除が増えすぎると課税されなくなる(非課税になる)。一説によると、非課税だと在留資格の更新や、家族の呼び寄せ等に不利に働くとも言われるが、入管がそう公表しているわけではないのではっきりしない。この制度を使うかどうかは、あくまで自己責任で決めていただくよう。

破損したレジストリの最適化?でパソコンが速くなった話

ネットブックを買って、1年半ぐらい使っていたらだんだんと処理速度が遅くなって、困っていた。

それでも無視して使っていたのだが、このネットブックにインストールして使っている無料のウィルス対策ソフト「AVG」から「破損しているレジストリが〇〇個あります」というお知らせが来ていたのをようやく気にし、レジストリの最適化というものを無料ソフトで挑戦してみよう、という気になった。が、AVGでやろうとすると有料のやつにアップグレードしなければならない風だったので、別にフリーソフトを探し、あくまで無料で対処することにした。

このウェブサイトでGlary Utilitiesというフリーソフトをダウンロードし、インストールしてみた。↓
https://freesoft-100.com/review/glarysoft-registry-repair.html

しかし、なぜか初期画面がフランス語の上に、日本語化の手順が上のウェブサイトの解説と同じでない。

まずメニューバーの位置が違う。メニューは右上の方にある。
プルダウンメニューが開いたら、セッティングは下から三番目。
すると「一般設定」のタブが開いた状態になるので、一番上のプルダウンメニューから日本語を選べばよい。

あとはワンクリックでいろいろやってくれたようで、とりあえずパソコン速くなってよかった。

が、その後このソフトを入れっぱなしにしていると、いちいちうるさい。この作業、一度やれば当面やらなくてよさそうなので、作業が終わったらさっさとアンインストールするのが吉と思われる。

タガログ語とインドネシア語の文法比較(1)

タガログ語(フィリピン語)とインドネシア語が似ている、というのは知られたことであるけれども、文法上のどこが具体的に似ているのか、というのを日本語で検索してもヒットしない。そこで、自分で書いてみることにする。ただし、現状私はインドネシア語を数年独学した程度で、話せるレベルではないというのは言い添えて置く。

今回は動詞で似ている点について。

1) 焦点
タガログ語の動詞には焦点(あるいはトリガーとも呼ばれる)のシステムのために動詞に独特の難しさがあるが、インドネシア語もうっすらとそれらしい特徴があるように思える。

1-1) 行為者焦点
当然ながらぴったりは対応いないが、おおざっぱに言えば、
タガログ語  インドネシア語
mag-動詞 meng- / meN- 動詞
-um-動詞    ber-動詞

で、あと使役は
タガログ語  インドネシア語
magpa-動詞 mengper-動詞

と把握しておけば便利そうである。

1-2) それ以外の焦点
タガログ語で目的(あるいは対象とも呼ばれる)焦点動詞、方向焦点動詞、手段焦点動詞etc.は、どうやらインドネシア語では接尾辞に-kan, -an, -iをとる動詞がそれに似ている。
タガログ語               インドネシア語
i動詞、in動詞、an動詞、pag- -an動詞etc.  -kan, meN- -kan, -an, -i

あと、受け身の表現はタガログ語ではin動詞の一部で行為者を言わないのが普通な語が一部にある程度ではっきりしないが、インドネシア語は前置詞diが動詞の接頭辞として機能するよう。よって、

タガログ語  インドネシア語
-in動詞    di-動詞   

2) モード
タガログ語の状況モードは、かなりの程度インドネシア語の接頭辞terとニュアンスが似ているように思われる(特に、非自発的行為に使うもの)。よって、
タガログ語   インドネシア語
maka- / makapag-動詞 ter-動詞
ma- / ma- -an動詞     ter- -kan動詞

3) 名詞化
正しくは語根の名詞化なんだろうが、動詞の項に含めておく。
「~する人」を指すのに、タガログ語ではmag- / mang-動詞の未然相(ようするに未来形)を使うが、インドネシア語では接頭辞pe-を使う。

タガログ語   インドネシア語
mag- / mang-動詞の未然相   pe-  

以上、今回のメモはこんな感じで。(今後、適宜訂正していく可能性あり)

ブキッドノンで視察団がNPAに襲われた件

去る5月30日のことだが、ミンダナオ中部ブキッドノン州のインパスグオンで、先住民コミュニティを訪れていた国際視察団をNPA(共産ゲリラ)が襲う事件があった。護衛の軍人7人を含む11人が負傷者したが、死者はいなかった。

この視察団はASEAN諸国からの参加者で構成されていたので、この事件はベトナムのメディアも報じている。

(英語記事↓)
https://www.pna.gov.ph/articles/1071108

https://www.philstar.com/nation/2019/05/31/1922257/7-soldiers-hurt-bukidnon-landmine-attack

https://www.vietnamnews.net/news/261316586/npa-terrorists-attack-foreign-observers-convoy-in-bukidnon

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