タガログ語の”ngayon”と”sa ngayon”の違いについて

どの言語でも、時間(とき)の言い方には「絶対的な時間」と「相対的な時間」がある。「絶対的な時間」とは、「9月4日」のように、今日言おうが明日言おうが時間が変わらないもの。一方、「相対的な時間」は、「今日」や「明日」のようにいつ言うかによって時間が変わってしまうもの。

日本語だと、絶対的な時間を表すことばには「に」がつくが(例:「9月4日にフィリピンに行く」)、相対的時間を表すことばには通常「に」がつかない(例:「明日フィリピンに行く」)。

で、たまたまかもしれないが、日本語も英語もタガログ語もこの部分に共通点がある。もっといえばセブアノ語もチャバカノ語も、おそらく他のフィリピン諸言語も。

英語では絶対的な時間には”on”やら”at”やらがつき、タガログ語では絶対的な時間には”sa”やら”ng”やらがつく(”ng”は時刻のときに使う)。
そして相対的な時間には何もつかない。

というのが基本的な理解なのだが、タガログ語には”sa ngayon”という言い方もある。

“ngayon”だけだと「今」あるいは「今日」で、相対的な時間。

そして、”sa ngayon”はたいがいの場合「今のところ」という訳が適当だと思われる。相対的な時間の例外ということで覚えておくとよいだろう。

まぁ考えてみれば、英語も「今のところ」は”as of now”と言い方があるので、タガログ語が特別ということでもない。

(追記:
セブアノ語、チャバカノ語その他のフィリピン諸語でも”sa ngayon”のような言い方をするのだろうか。調べてみたら面白いかも。

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(タガログ語)isulatとsulatinに違いはない

最近、フィリピンというかミンダナオの治安の話ばかりメモしてましたが、久々にタガログ語の言語学習について書いてみます。

まず、報告。数カ月前にyoutubeにアップしてみた自作のタガログ語入門第一回の再生件数がようやく2,000を越えました。

どんな人が見ているのか、日本人だということ以外あまり細かいことはわかりませんが、当初は男性の比率が80%以上だったものの、さっき見てみたら60%まで下がってました。タガログ語を勉強する人って、オジサマだけじゃないんですね。

さておき、標題の件。タガログ語の文法は、他のアジアの言語に比べて動詞が大変。活用もちょっと難しいですが、それより困るのは動詞のタイプ(=焦点またはフォーカス)を選ぶところ。1アクションにつき最低2つの動詞があって、たとえば「食べる」ひとつとっても、複数の動詞チョイスから選ばないと文が作れません。

動詞の語根(単語)だけ知っていても動詞が作れない、というのが初級のうちにフラストレーションの元になります。独学で勉強しようとして脱落していく人が増える原因もこれです。なんせ、フィリピン諸語以外の言語からの応用というのができない。

フィリピン諸語の中でもタガログ語に限って言えば、もうひとつ厄介な問題があります。たとえ動詞のフォーカス(焦点)の仕組みを理解しても、個々の動詞について何を選べばいいか、体系的な法則がないのです。たとえば、「食べる」の行為者焦点はもっぱらum動詞の”kumain”が使われて、mag動詞の”magkain”を耳にすることはまずありません。そして、どうしてum動詞を選ぶのかは説明できないんです。まぁ、これについては日本語の動詞にも同じような問題がありますが。

一方で、どっちでもいい場合もあります。行為者焦点動詞でいうと、

bumasa と magbasa 読む
sumulat と magsulat 書く

とかです。いつだったか、「um動詞の方が一回切りのアクションで、mag動詞の方が繰り返している感じがする」と聞いたことがありますが、普通に話す分には微妙すぎて気にする必要はないでしょう。

そして「書く」という動詞に関しては、目的焦点のときも、どちらでもいいようです。厳密に言うと同じではないようですが。。

isulat, sulatin 書く

あえて言えば、原形(不定形)-inの形は名詞とまぎらわしくなるので避ける傾向があるようです。

タガログ語:「小辞と代名詞の二番目ルール」

タガログ語を学ぶとき、耳から覚えてしまう人が多いと思います。というのも、日本語等と比べてタガログ語では会話で使われる文法パターンや語彙がかなり少ないから。動詞の活用にしてもシンプルですから、動詞のフォーカス・システムの基礎さえ理解できれば、あとは自然習得も十分可能だと思います。

とはいえ、他にもトリッキーなところはあります。ようは、例外。

中でも一番苦労するのは、語順が変わるところだろうと思います。以下の二点。
1) 接辞”ay”
もともとタガログ語にあったのかなんなのかわかりませんが、”ay”は興味深い接辞です。カードゲームのウノで言ったら「リバース」みたいな役割を担っていて、これが付くと語順がひっくり返ります。しかし語順が変わるなんてこんがらがるし、カジュアルな会話では頻出しないので初心者は避けるほうが無難。

2) 「小辞と代名詞の二番目ルール」
私は、「小辞と代名詞の二番目ルール」と読んでいます。説明すると複雑になってしまいますが、てっとり早く言えばとにかくこのふたつは2番目に来たがる。どんな時にかというと、HindiとかPwedeとかdito, sa ….とか、とにかくなんかが前についたとき。2番目に来る「代名詞と接辞」とは、ようするに次の文から”kumusta”を除いたふたつのこと。

a) Kumusta ka na?
b) Kumusta na kayo?

この2パターンさえおさえておけば、”po”だろうが”ba”だろうが、あるい”lang”でも、”na”のあるところに置き換えればいい。そして、代名詞と接辞の順番について言うと、b)のパターンが普通だが、”ka”のときはa)のパターンになる、と覚えておけば、とりあえずは十分です。

この「二番目ルール」の結果、VSOだったはずの語順がSVOになったりもしますが、それは結果論です。そもそもSVOとかいう分析の仕方はヨーロッパ言語用のものなので、タガログ語では特に参考にもなりません。

さて、学習が進んで目的焦点とか方向焦点とかの動詞タイプをやるようになったら、そのときは追加で”ko”,”mo”,”nyo”や、代名詞のコンビネーションを覚えなければいけません。順序には規則性がありますが、それはまたいつか書きます。

<おまけ1>
「二番目ルール」について、たとえば以下のサイトで日本語解説があります。ま、読んでわかるようなら苦労はいらない、という漢感じかもしれませんが。
http://learn-tagalog.finite-field.com/home/4-ay
http://pilipino.nobody.jp/mag-aral/lesson75.htm
http://filipino.fc2web.com/yamashita/yamashita435.html

<おまけ2>
セブアノ語(ビサヤ語)も、「二番目ルール」があります。おそらく他のフィリピン諸語にもあるでしょう。たとえばチャバカノ語にもあります。