マラウィ危機のその後2(アップデート)

5月に発生したマウテグループなど(現在はISISと呼ばれている)によるマラウィ占拠事件は、残る戦闘現場はサッカーコート3つ分、ようやっと最後の一押しというところだが人質が40数人いるため思い切った作戦ができない状態という。ただ、兵糧攻めをする場合、先に人質が飢え死にしてしまうのは目に見えている。一挙に解決というのは難しいようだ。

(追記:10/4に、上述の人質のうち少なくとも17名が救出された↓
https://www.rappler.com/nation/184223-marawi-hostages-rescued

下の英語記事によれば、9月30日時点の死亡者数は、政府側が155人、民間人が47人、テロリストが749人となっている。
https://www.rappler.com/nation/183849-marawi-death-toll-september-30

テロリストの武器は兵器の他、即席爆弾(または即席爆発装置) =Improvised Explosive Device, IEDと呼ばれる簡易手製爆弾を使っており、今回押収されたものの写真などもメディアに出回っている。中には、1ペソ硬貨を使ったものなどもある。こういったテクノロジーはネットワークを通じて国際的に技術移転されているわけだが、それだけの能力があるんだったらもっと建設的な方向に使っていってれば、今頃ミンダナオはもっと発展しているだろうにと思う。

フィリピンパブ嬢の社会学 (新潮新書)
中島 弘象
新潮社
売り上げランキング: 603
広告

マラウィ危機のその後(アップデート)

5月に発生したマウテグループなど(現在はISISと呼ばれている)によるマラウィ占拠事件は、規模は相当縮小したものの、いまだに戦闘が続いている。立て籠もっている残党はおそらく20人程度だが、リーダーが殺害されたという報道はないのでまだ戦っているか、戦死したのか、あるいは既に脱出したのか不明。

下の英語記事によれば、これまでのところの死亡者数は、政府側が145人、民間人が45人、テロリストが600人以上となっている。また、マラウィの町は壊滅的な被害を受けており避難民は周辺を合わせて60万人規模。
https://www.rappler.com/nation/181543-marawi-war-reinforcement-lake

町の大部分は既に解放されているので、少しずつ復興に着手しつつあるところ。相当な時間がかかるだろう上に、もともと貧しい地域なだけに復興支援漬けになりそうな感じがしなくもない。

ところで、ミンダナオに敷かれている戒厳令は当初7月までだったのだが、国会の承認を得て年末まで延長されている。フィリピン憲法のことはよく知らないが、年末になったらまた延長の手続きがとられるような気がしてならない。

フィリピン―急成長する若き「大国」 (中公新書)
井出 穣治
中央公論新社
売り上げランキング: 855
フィリピンパブ嬢の社会学 (新潮新書)
中島 弘象
新潮社
売り上げランキング: 603

ミンダナオの戒厳令の年末までの延長が承認された件

本日7月22日、ミンダナオ全土に出されている戒厳令の年末までの延長がフィリピン上下院の合同特別会議にて賛成大多数(賛成261、反対18)で承認された。
今回は日本のメディアも取りあげている。

(参考記事)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM22H5A_S7A720C1EA3000/
http://www.asahi.com/articles/ASK7Q63QLK7QUHBI01Y.html

朝日新聞で、「民間人45人を含む578人が死亡。」と報道されている。昨日のrapplerの記事(参照)で読んだ限り、この中に100人の政府軍兵士も入っていて、一方テロリスト側の死者は425人。

上の日経の記事によれば、マラウィに残っているテロリスト側の勢力は70人程度となっている。

結局当初の目標であった戒厳令布告から60日以内にテロリスト(マウテグループとアブサヤフを中心とする連合)を当地から一掃することができず、かつミンダナオの他の地域ではNPA(共産ゲリラ)の動きも前より活発になっているようにさえ見える。おそらく、政府からの締め付けが強くなった分の反発にすぎないのだろうが、一般人からすると今まで事件のなかったところで事件が増えている、という印象ではなかろうか(そもそもマラウィ危機もあるいはしばらく前のボホール島の事件も、もし政府がバシランやスールーでの掃討作戦を強化していなかったら発生しなかったかもしれないが、「もし」の話はあまり意味がなさそうだ)。

ひとついいところは、最近はサンボアンガおよびスールー諸島の方では事件が起きていないようで、IS系過激派に関して言えば、マラウィに勢力が結集された分だけ周辺は静かになっていると言ってよさそうだ。

フィリピンを乗っ取った男
アール・パレーニョ
太田出版
売り上げランキング: 515,107
バナナの世界史――歴史を変えた果物の数奇な運命 (ヒストリカル・スタディーズ)
ダン・コッペル
太田出版
売り上げランキング: 64,059

ミンダナオの戒厳令が年末まで延長になりそう

もうすぐ憲法上に規定された最長の期間である60日を迎える戒厳令について、憲法が認める国会の承認のもとでの延長が実現しそうな見通しだ。
なお、本件について採決が行われるのは22日(土)とのこと。

(英語記事)
http://manilastandard.net/news/top-stories/242268/-161-days-more-for-martial-law-.html
http://newsinfo.inquirer.net/915409/senate-united-on-martial-law-extension-split-over-duration

上記記事によれば、延長の理由はマラウィを襲ったテログループであるISが今後またミンダナオで事件を起こしかねない、ということ。

うがった見方をすれば、戒厳令延長のためにわざと掃討作戦をダラダラと続けているのでは、という風に見えないこともないがどうだろう。

一方で、フィリピン各地にいる麻薬戦争の当事者やらドゥテルテの政敵からすれば、大統領が対テロ作戦にリソースをつぎ込んでいる限りは自分たちが当面狙われなくなるため、テロ組織を応援したいという思惑がありそう。

「ミンダナオ」という縛りがある限りにおいては、お互い戒厳令の延長にはとりあえずは賛成なのかもしれない。

フィリピンを乗っ取った男
アール・パレーニョ
太田出版
売り上げランキング: 515,107
バナナの世界史――歴史を変えた果物の数奇な運命 (ヒストリカル・スタディーズ)
ダン・コッペル
太田出版
売り上げランキング: 64,059

フィリピンを乗っ取った男

決して新しいストーリーではないのだが、一部とはいえ「戒厳令(martial law)」下の現在のフィリピンを理解する上で非常に良いと思った本。最近ようやく読んだのでここにメモしておく。マルコス政権でいわゆる「クローニー」として巨万の富を築き上げたダンディン・コファンコことエドゥアルド・コファンコ・ジュニア(Eduardo Cojuangco Jr.の物語。ちなみに、彼は現在もサンミゲルの会長であり、毎年フォーブス誌のアジアの富豪ランキングにも登場している。

そもそもマルコス時代になんで戒厳令になったのか、それを国民がどう受け入れ、そして戒厳令下で結局は何が起こったのか。今ミンダナオに敷かれている戒厳令とその意味を読み解く上でも非常に参考になった。

「フィリピンを乗っ取った男」 アール・パレーニョ(2005)

フィリピンを乗っ取った男
アール・パレーニョ
太田出版
売り上げランキング: 515,107

一番のポイントは、ダンディン・コファンコがコラソン・アキノ(旧姓コファンコ)のいとこで、ノイノイ・アキノ前大統領のおじだということ。なので暗殺されたベニグノ・アキノと対立するはずのダンディン・コファンコは、結局は身内なのである。本書では、マルコス時代にタルラックでの地方選挙でダンディン・コファンコとベニグノ・アキノが交渉し、お互いに政治家としての地位を築いていった部分も描かれている。

そして、アキノ政権下で一時国外逃亡していたダンディン・コファンコはこっそり帰国し、差し押さえられていた持ち分を裁判で勝ち取りサンミゲルを再び手中に収める。マルコス時代のココナツ課徴金をめぐる裁判はずるずると引き延ばす作戦をとり、これはつい最近まで続いていた。
(英語記事)
http://newsinfo.inquirer.net/733742/sandiganbayan-thumbs-down-partial-judgement-on-coco-levy-case

こういった歴史を学んでいくと、フィリピンの政治がちょっとわかるようになってきて嬉しい。特に、なぜボンボン・マルコスの人気があるのかというのは、外国人にはちょっと理解できないことだから。

フィリピンバナナのその後―多国籍企業の操業現場と多国籍企業の規制
中村 洋子
七つ森書館
売り上げランキング: 1,031,502
バナナの世界史――歴史を変えた果物の数奇な運命 (ヒストリカル・スタディーズ)
ダン・コッペル
太田出版
売り上げランキング: 64,059

マラウィ危機(マウテグループによる占拠事件)死者数のアップデート

5月から続いているマラウィでのISIS(ここでは、マウテグループ、アブサヤフ、さらにBIFFやアンサルカリファ・フィリピンの連合とされる)との戦闘についてのアップデート。

ネットメディアのRapplerによると6月30日時点で、死者数は
政府側(国軍と国家警察).. 82人
テロリストに殺された民間人.. 39人
テロリスト.. 317人
という。これまでに政府やNGOが1713人救出したが、まだ全面解決にはいたっていない。

(英語記事)
http://www.rappler.com/nation/174358-death-toll-marawi-clashes-june-30

ちなみに5月に敷かれたミンダナオ全域の戒厳令は、60日以内という制限つきなので7月22日頃までには解かれないといけないのだが、果たして現政権はルール通りに行うのか、その点も少し気になるところではある。

フィリピン―急成長する若き「大国」 (中公新書)
井出 穣治
中央公論新社
売り上げランキング: 855
フィリピンパブ嬢の社会学 (新潮新書)
中島 弘象
新潮社
売り上げランキング: 603

マラウィ危機、マウテグループとの戦闘の死者は103名以上

先週から始まった南ラナオ州マラウィ市での戦闘(マラウィ危機(Marawi crisis)はテロというよりは内戦のようになっており、既に20万人いるマラウィ市民の大半は国内避難民として他地域に退避しているとされる。市内では、ISに忠誠を誓うマウテグループ&アブサヤフが当局を相手に戦闘を繰り広げており、いまだに収まる気配はない。5月29日現在で、報道では双方の死者が103名以上と伝えており、内訳は民間人19名、国軍兵士11名、国家警察官4名、テロリスト側61名を含む、とある。残りの8名は両者の衝突以外での死亡で、渓谷で死体が見つかったと書かれている。8名の死体に関するビデオは下のインクワイアラーのウェブサイトに載っている。

(英語記事)
http://edition.cnn.com/2017/05/28/asia/isis-threat-southeast-asia/
https://newsinfo.inquirer.net/900380/marawi-death-toll-now-at-97-army
https://www.nst.com.my/world/2017/05/243714/more-100-people-killed-marawi-week-long-clash

そして、戒厳令下のミンダナオでは令状なしの逮捕が実際に起きた。国内避難民にまぎれてマウテグループの構成員とみられる人物が侵入したためで、当局はこの者を令状なしに逮捕した。

(英語記事)
http://www.rappler.com/nation/171085-warrantless-arrests-military-checkpoints-mindanao

テロリスト側は殺した人の生首を置いたり、死体の隣りに「裏切者」と書いたメモを残したり、ISだったりメキシコのマフィアのやるようなことも行っている。これも写真がネットに落ちているが、このブログでは敢えて紹介しない。

なお、当局は今回の掃討作戦は2,3週間中に終わると見積もっている、と報道されている。逆に言えばそれぐらいは少なくともかかるということで、私も今後もウォッチしていきたい。

最後に、今回の戦闘に関しては英語のウィキペディアでも随時、時系列でのまとめが更新中だ。
https://en.wikipedia.org/wiki/Marawi_crisis

フィリピン―急成長する若き「大国」 (中公新書)
井出 穣治
中央公論新社
売り上げランキング: 855
フィリピンパブ嬢の社会学 (新潮新書)
中島 弘象
新潮社
売り上げランキング: 603