使える語学力

多言語学習の本のレビュー。

最近、日本人でも若いポリグロット(多言語話者)が外国語学習または多言語学習ガイドを書くようになっていて、動画など同時代的な学習方法も紹介しながら誰でも(理論上は)できる学習法が簡単に手に入るようになった。

「使える語学力 -7ヵ国語をモノにした実践法」橋本陽介(2015)

方法論の紹介もさることながら、最近のガイドは筆者を不必要に高い位置に置かずに、自らの限界を認め読者の手の届くところにいるように感じさせるような記述があるのが特徴と思う。例えば、「モノにする」というのはネイティブレベルになることとは全く違う、とか、実際に「モノにした」筆者も、久しぶりに話す言語では勘が戻るまでに一定程度の時間がかかる、とか。

また、『「できない」と言っている人は絶対量が全然足りてない』というような、同時代の同朋に対する厳しい指摘が見られる点など、昔の偉い方々ならわざわざ書かないような記述もあったりする。

この本の著者の橋本は文学が専門の大学の先生ということで、学者の書いた真面目な本ではあるわけだが、同時に彼は高校で中国語等を教える教師でもあったわけで、進学校の大学受験に相当に近い距離にあった自身の体験を踏まえて日本の受験のどこが外国語習得にとって害をもたらしているのか、を主張している点などアドボカシーの要素も入れているのも非常にユニークで面白い。

さて、彼の外国語学習ガイドでは『「使える外国語」にするための3つの大原則』が紹介されていて、それぞれ
1 「音声」を覚える。
2 その言葉が使われている「状況」(いつ、どこで、どのように)を覚える。
3 「能動的学習」を追加する。

である。3などは、日本人にしか必要ないのではないかというような項目である。それほど、現状(平均的に)日本人の学習スタイルは受け身なんだろうなぁ。

これはようするに、日本の学校教育の中での外国語教授の反対をやればいい、ということ。となれば、結局は日本なんかにいないで海外に行ってストリートで修業してくるのが一番、という結論になるし、実際に筆者もそうやってコツを身に着けたと書いてある。なので、読者もそうすればよい。

もちろん日本でもできることはいっぱいあるだろうけれども、もし是が非でも日本にいなければいけないような人なら、どのみち外国語なんて学習しても使うチャンスはないんじゃないかと思う。だから、思いきって一人で行ってきて、自分なりに反省してどんどん能動的に自分のやり方を積み上げていけばよい。

7カ国語をモノにした人の勉強法 (祥伝社黄金文庫)
橋本陽介
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純ジャパの僕が10カ国語を話せた 世界一シンプルな外国語勉強法
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わたしの外国語学習法

いろんな外国語学習法の本を読んできたけど、これが一番面白かった気がする。

「わたしの外国語学習法」 (ちくま学芸文庫) 文庫 – 2000/3

わたしの外国語学習法 (ちくま学芸文庫)
ロンブ カトー
筑摩書房
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著者は、ハンガリーを出ずにロシア語を皮切りに数々の言語を習得していった。その方法論は、途上国の人が実践しているものだ。とにかく、観光客をつかまえて練習する。これが基本。

日本でも最近は外国人観光客がかなり増えているので、大都市に住んでいる人なら実践するチャンスがかなりある。ただ、現代日本人の若者一般に言えるのは、知らない人と話さないということ。隣に人がいても平気で遠くの友人とチャットをしていたりする。これは外国語学習にとっては良くない兆候。

思うに、途上国を旅行していればかなりそういう態度は改まってくるので、旅に出るのはそういう意味でもいい投資だと思う。

俺も先日、東京で電車に乗っているときにたまたまタイ人が隣にいたので話しかけてみて、とっても良い練習になった。そのとき気付いたことが2つある。

ひとつは、自分から話しかけるためにはそれなりに基礎ができているという自信がなければいけない。でないと、会話が続かない。

もうひとつは、きっかけがいる。俺の場合はタイ語の単語帳を持って勉強していて、それを隣のタイ人も見たから話しかけることにしたのだった。こちらは一人、相手は2人とかいうのが良いだろう。通りで道を尋ねるときもそうだが、相手が一人だと警戒されるかもしれない。

ロンブ・カトーも、やはりそういうシチュエーションで話しかけていたのではなかろうか。そんな気がした。

ところで、本書ではもうひとつのユニークな学習法が中心にあるのだが、それが外国語学習の最初から小説を読もうとする、というもの。「ダーリンは外国人」のトニーなんかはこのやり方はうまくいかんだろう、と言っているが、俺は一理あると考えている。言語に潜む法則性を暴いてやろうという知的探求心を伴う学習は、教科書に書かれている文法の丸暗記なんかよりよっぽど記憶にひっかかると思うからだ。

試しに、教科書が出てないような言語を勉強してみると良い。少数言語や、いわゆる方言というようなタイプの言葉とかだ。俺はフィリピンでチャバカノ語やセブアノ語をやってみたけど、自分で教科書を作ってやるぐらいの勢いでルール解明に全力を挙げていたときはたしかに楽しかった。チャバカノ語にいたっては、英語の論文とかも読んでいたものだ。

そんなわけで、参考書なんか使わないある意味原始的なやり方が、実は効率性という面では大差ないということは十分にありうると思う。問題は、そういった勉強法を実践できる人はかなり限られているということで、「教えられる」ことに慣れているような人たちにはちょっと難しいんだろう。学習の主語は自分である。そして大人になってから言語を学ぶということは、自分が主体にならなければ無理だと俺は思う。「教育される」のではなく、「学習する」べき。

7カ国語をモノにした人の勉強法

残念な話ですが、語学の学習法の本をいくら読んでも語学ができるようにはなりません。でも、日本人のポリグロット研究をしている手前、一通りチェックしておきたいのです。そんなわけで、本書。

「7カ国語をモノにした人の勉強法」橋本 陽介(2013)

7カ国語をモノにした人の勉強法 (祥伝社新書331)
橋本 陽介
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著者は若き慶応の先生ということです。といっても学者が書きそうな内容は控えめで、半分ぐらいかな、という感じ。一般の人が読むとそれでも学者めー、という雰囲気がするだろうなぁ。著者の専門は中国語、ということでヨーロッパ系言語だけでなく、ロシア語も入っていたりするので、メジャー言語狙いとはいえ視野は広め。そして書かれている内容は正攻法というか、正論というか。とにかくまずは短期でもいいから留学してこい、というようにも読めた。個人的には、大賛成。やはりコツは本からではなくて、実際に行って揉まれてこないと身につかないでしょうよ。

さて、そこそこ評判が良かったのか、またはやり方をもっと書けというクレームが多かったからか、同著者は去年、続編を出している。レパートリーに前作の際には「習得中」となっていた韓国語がきっと加わっているだろうから、こちらもそのうち読んでみようかなぁ。

「使える語学力 7カ国語をモノにした実践法」橋本 陽介(2015)

日本人のポリグロット(多言語話者)

日本一のポリグロットを目指すことにしたからには、一応現状のリサーチを、ということで「日本人のポリグロット」を調べてみました。この記事は、今も生きている人編です。

既に亡くなっている人については以下のリンク先に別の記事を書いています。

・最近亡くなった人編
(準備中)

・歴史上の日本人編
日本人の偉人でポリグロットは誰か
明治のポリグロット:福島安正と柴五郎

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ポリグロティスム(polyglotism)

ポリグロット(polyglot)とは数ヶ国語を話す人。日本語では普通、多言語話者というと思う。

http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_polyglots

自分のチャンネルを持っている有名(と思われる)な現代の多言語話者は、以下
http://apolyglotworld.com/the-9-habits-of-highly-effective-polyglots/

しかし、残念ながらいつも愛用しているalcのウェブサイトには”polyglotism”が載っていない。最近の言葉なんでしょう、きっと。しょうがないので、英語のウィキペディアで説明を見てください。

俺は、恥ずかしながら10言語習得を目標にしていたのだが、どうやら天才じゃなくても、人間に本来備わっている能力をちゃんと活用すれば10以上いけるらしいということが最近わかった。だって、現にできる人がたくさんいるんだもん。

上記ウィキペディアによれば、12言語以上「流暢に」話せる人は「ハイパーポリグロット」らしい。日本人では、ここまで到達している人はまだいないんじゃないだろうか。(もちろん、グローバル化が進んでいる昨今、「日本人では」というくくり自体が意味を成さないという指摘もあろう。)

定義を言い出すと、「言語」の区別も多分に政治的なところがあるので、結局テキトーにあしらいながら話を進めていくしかない。そもそも、言語習得は競うものではない、というのが前提だろうな。

ところで、気になるのは、東&東南アジアの諸言語をマスターしている人が上記のリストにはいないということ(インドはいる)。これももちろん、リスト自体が絵英語圏のメディアによく取り上げられる人に偏っているというのもあると思う。日本ではまぁ有名なのに、ピーター・フランクルはこのリストには含まれていない。

youtubeでの音楽演奏とか観てると、韓国や中国にもすごいやつが絶対いるに違いない、という気がする。ということは日本にも既に誰かいるのかな。もうちょっと調べてみたいと思います。

語学学習。語彙は宝物

この言葉は、高校時代の英語の先生のセリフ。他には「本はたくさん読みなさい」とも言っていたな。

「語彙は宝物」。いい言葉だと思います。海外生活の中で、わからない言葉をひとつひとつ見つけて集めて行くって、宝探しみたいなもの。語学を楽しむ、って大事。

で、私の語彙増強法は、高校時代と基本的に同じです。単語帳。

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なにが良いって、通勤中だったり、電車等で移動するときにさっと取り出して勉強できる点。スイッチを入れる必要もなく、なくす心配もしなくていい(経済的損失がないから)。そして、後で振り返ると「こんなに勉強した」という自信にもなります。

単語帳はおそらく日本(と東アジア?)でこそ普及していますが、諸外国では高校生が朝の通学電車の中でやるほどの次元ではないでしょう。勤勉さの象徴、誇るべき日本の文化と思います。

私はまず、知らない単語に出会ったらメモ(裏紙)に書きつけます。そして家で調べるなり、友人に聞くなりして納得できる訳語を探します。訳語は、日本語とは限りません。既に自分が習得している言語で(意味論的に)近いものを関連付けます(たとえば西語のagenciaと英語agency)

それが終わると、データ変換。アプリは、ここ数年はevernoteを使っています。こうしておくと、後々ど忘れしたときに検索でき、作った単語帳を紛失したときにも簡単に対応できます。

最後に、単語帳に(もちろん手書きで)転記します。ここまでの時点で書くこと2回、入力すること1回ですから、既にそこそこ記憶できています。もしタブレットでフラッシュカードのアプリを使うとすると、この書く動作が省略されるので覚えが悪くなるかもしれません(私は未経験なので実感としてはわかりません)。

で、用意ができたら早速使います。作成してから開始までに日をあけないほうがいいです。外出するときに歩きながら、電車に揺られながら。。それを、基本的に毎日続けます。暗記するには家にこもるより、外気に触れながらの方がいいし、通勤のような自分のルーティーンにこれを組み込むことで、身体が自動的に動くようにもなります。言い換えれば、行動を開始するのにストレスを感じません。

ひとつの単語帳は上下2段に分け、どちらの方向からも開始できるようにします。すると、ひとつの単語帳あたり120~200語が収録できます。普段はこれを1ヶ月から1ヶ月半使い続け、次に進んでいます。

発音ごと覚えるために、歩きながらぼそぼそと発音したり、口パクしたりします。電車の中でも同様にするかは、時々の状況に応じて判断。

海外に住む時は、現地で入手できるかわからない場合、日本から持っていきます。自作することもできますが、日本で入手する方がコスト的に得ですので(東アジアだと現地でも普及しているかもしれません)。

ちなみにフィリピンだと、ダイソーの現地法人であるサイゼンに置いていたと記憶しています。普通の文房具屋にもないことはないですが、サイズが異様に大きかったりして使いづらいと思いました。

italki(アイトーキ)が言語リストにセブアノ語を追加

ここのところ、引きこもりな上に気持ちがのんびりしているのでブログの更新頻度が急上昇しています。

さて、先日ふと思いついてitalkiの言語リストにセブアノ語とチャバカノ語を追加するようリクエストしてみたところ、このたび見事にセブアノ語が追加されました。これでセブアノ語の先生を探すのがもっと楽になるはずです。

といっても既にプロフィール作ってしまった既存のユーザーがいちいち変更するとも思えないので、これから新たに登録してくるユーザーに期待をします。ということは、実際にセブアノ語でチューターを検索できるようになるのはまだまだ先の話かな。

ちなみにチャバカノ語を追加しない理由については公用語でない上に「たかだか100万しか話者がいない」からだそうです。まぁ世界人口が60億の時代に100万じゃ少ないのかもしれませんが、そこらへんの感覚はちょっとわからん気もします。ひとつ言っておくとチャバカノ語はアジアにある唯一のスペイン語クレオールであるだけなく、世界のスペイン語クレオールの中で一番話者人口が多い言語です

言語人口だけで言えば、italkiの言語リストにある中で言ったらたとえばエスペラントなんて統計すら持っていない上に、多く見積もったとしても100万なわけです。その上で言語能力まで加味すると、圧倒的に少ないに決まっています。

が、そこは言語の政治。政治力の強い先進国の人が多いエスペラントの方が勝つのは見えています。

私にとっても、チャバカノ語が引き続き隠れた言語である方が萌えます。インディーズバンドのファンみたいな気持ち、と言ったらわかっていただけるでしょうか。