ミンダナオ戒厳令延長が承認された件

ロイターによれば、今年末までだったミンダナオ島全域に対する戒厳令の一年間の延長がフィリピン議会によって承認された。

フィリピン議会、ミンダナオ島の戒厳令延長を承認 来年末まで」ロイター通信2017年12月13日付

名目はISに忠誠を誓うイスラム過激派グループの掃討だが、ミンダナオには共産ゲリラ”NPA(新人民軍)”の勢力もあり、こちらの鎮圧にも力が入れられている。NPAは長らく前に非合法化されたフィリピン共産党(CPP)の軍事部門で、歴史は古い。最近ではフィリピン政府とCPPが2016年に停戦合意を結び、ようやく和平実現かと思われたものの、翌2017年2月にはドゥテルテ率いるフィリピン政府が停戦を破棄し、掃討作戦に転じている。もしかしたらドゥテルテ個人としては共産党勢力からの選挙協力も受けており平和的に解決したかったのかもしれないが、「テロ組織」という点ではNPAはアブサヤフやマウテグループ等のIS系勢力と同列にくくってしまう方が、国際社会からの協力も取り付けやすい等々あるのかもしれない。とにかく現政権の重点課題は治安の向上で、今後もこの方向は続くとみてよさそうだ。

↑大宅壮一ノンフィクション賞受賞作家、野村進のデビュー作。おもしろかったです。

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ケソン市でアブサヤフ構成員が逮捕された件ほか

去る11月17日になるが、マニラで開催されていたASEANサミットに関連して、国家警察はテロを企てていたとされるアブサヤフ構成員3名をケソン市で逮捕した。このタイミングでうまい具合に逮捕できているあたり、当局が自分たちをアピールしているようにしか見えないのだが、どうだろう。

(英語記事↓)
http://newsinfo.inquirer.net/945772/3-alleged-abu-sayyaf-men-tagged-to-terrorize-asean-summit-fall-asg-pnp-asean-summit-2017asean-terrorism

さて、それとは別に、11月12日には拉致されていたベトナム人船員のうち3人が救出され、1名の死体が回収された。

(英語記事↓)
http://newsinfo.inquirer.net/944810/abu-sayyaf-kidnapped-vietnamese-fishermen
http://videos.inquirer.net/?vtnid=MCsxMDMzODkyfHwyMzY4fHwxMTE4fHx8fDV8fA==

彼らがいつ拉致されたのか記事からは定かではない。しばらく前の2016年11月に拉致されていた人たちに関しては2017年7月5日には6名のうち2名が斬首され、さらに7月11日にも別の1名の死体が回収されているので、残っているのは3人のはず。そうすると今回の4人が全員ベトナム人であるなら、別のところで拉致された人たちか、少なくとも数人は別のところで拉致された人も含まれているのだと思われる。

(英語記事↓)
http://news.abs-cbn.com/news/07/11/17/body-of-abducted-vietnamese-recovered-in-sulu
http://www.philstar.com/headlines/2017/07/05/1716662/abu-sayyaf-beheads-2-vietnamese-hostages

アブサヤフはマラウィ危機によってかなり弱体化していると思われるが、それでも地元のバシランおよびスールー諸島では最近になっても拉致は行っている。たとえば、9月28日にはスールーの地元政治家を拉致したと報じられている。
(英語記事↓)
http://www.philstar.com/nation/2017/09/28/1743532/abu-sayyaf-kidnaps-jolo-town-councilor

そしてこの記事の最後には、上記政治家を除いて、同日時点で拉致されて人質となっている人数と内訳が記載されている。「スールーにいるのは」という書き方なのでバシランには他にもいるのかもしれないが、ともかく全部で17名。内訳はベトナム人6名、インドネシア人5名、オランダ人1名、フィリピン人5名。

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マラウィ市の「テロリストからの解放」が宣言された

今年の5月にIS(マウテグループとアブサヤフ等の合同チーム)が潜入して以来戦闘状態だったミンダナオ中部のマラウィ市について、ドゥテルテ大統領は10月17日に「解放」されたと宣言した。

(英語記事)
http://news.abs-cbn.com/news/10/17/17/duterte-marawi-liberated-from-terrorists
http://www.sunstar.com.ph/manila/local-news/2017/10/17/duterte-declares-liberation-marawi-569850

また、当局は昨日、テロリスト側リーダーのイスニロン・ハピロン(Isnilon Hapilon)とオマル・マウテ(Omar Maute)は軍の作戦によって殺害されたと発表していた。
現在のところ、まだ残党は多少(6-8人の外国人を含むテロリスト30人程度)残っているもののリーダーが殺害されたので収束を宣言した、というのが実態のようだ。
ちなみに、人質もまだ20人程度残っているので、どうみても収束とはいいがたい。

(英語記事)
http://www.sunstar.com.ph/manila/local-news/2017/10/16/isnilon-hapilon-omar-maute-killed-marawi-569626

今回の一連の戦闘で、テロリスト側は800人以上が死亡したとされている。

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マラウィ危機のその後2(アップデート)

5月に発生したマウテグループなど(現在はISISと呼ばれている)によるマラウィ占拠事件は、残る戦闘現場はサッカーコート3つ分、ようやっと最後の一押しというところだが人質が40数人いるため思い切った作戦ができない状態という。ただ、兵糧攻めをする場合、先に人質が飢え死にしてしまうのは目に見えている。一挙に解決というのは難しいようだ。

(追記:10/4に、上述の人質のうち少なくとも17名が救出された↓
https://www.rappler.com/nation/184223-marawi-hostages-rescued

下の英語記事によれば、9月30日時点の死亡者数は、政府側が155人、民間人が47人、テロリストが749人となっている。
https://www.rappler.com/nation/183849-marawi-death-toll-september-30

テロリストの武器は兵器の他、即席爆弾(または即席爆発装置) =Improvised Explosive Device, IEDと呼ばれる簡易手製爆弾を使っており、今回押収されたものの写真などもメディアに出回っている。中には、1ペソ硬貨を使ったものなどもある。こういったテクノロジーはネットワークを通じて国際的に技術移転されているわけだが、それだけの能力があるんだったらもっと建設的な方向に使っていってれば、今頃ミンダナオはもっと発展しているだろうにと思う。

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マラウィ危機のその後(アップデート)

5月に発生したマウテグループなど(現在はISISと呼ばれている)によるマラウィ占拠事件は、規模は相当縮小したものの、いまだに戦闘が続いている。立て籠もっている残党はおそらく20人程度だが、リーダーが殺害されたという報道はないのでまだ戦っているか、戦死したのか、あるいは既に脱出したのか不明。

下の英語記事によれば、これまでのところの死亡者数は、政府側が145人、民間人が45人、テロリストが600人以上となっている。また、マラウィの町は壊滅的な被害を受けており避難民は周辺を合わせて60万人規模。
https://www.rappler.com/nation/181543-marawi-war-reinforcement-lake

町の大部分は既に解放されているので、少しずつ復興に着手しつつあるところ。相当な時間がかかるだろう上に、もともと貧しい地域なだけに復興支援漬けになりそうな感じがしなくもない。

ところで、ミンダナオに敷かれている戒厳令は当初7月までだったのだが、国会の承認を得て年末まで延長されている。フィリピン憲法のことはよく知らないが、年末になったらまた延長の手続きがとられるような気がしてならない。

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アブサヤフがバシラン州の村を襲撃

去る8月21日になるが、アブサヤフの一団がスールー諸島の手前にあるバシラン州(サンボアンガの向かいにある島)の村で行われる祭りを狙って襲撃を行い、村人9人が死亡、10人が負傷した。下のリンク先の英語記事にはビデオもついている。

(英語記事)
http://www.rappler.com/nation/179451-basilan-abu-sayyaf-attack-civilians-dead

同記事によれば、この襲撃はアブサヤフの他の戦線から軍の注意をそらすための作戦とみられる、とのこと。

そんな理由で襲撃を受ける方はたまったものではない。近年、バシランやスールー諸島からサンボアンガをはじめとする他州への移民が進んでいるのは、このような治安の悪化が背景にあるのは間違いない。ちなみにサンボアンガはものすごい勢いで人口が増えており、既に人口は100万人を超えているとみられる(この人口は、ミンダナオではダバオに次いで二位)。それだけでなく、サンボアンガ市民のムスリム比率が急激に増えているのも注目される。

このことが市内で使われる言語にも影響が大きな影響を与えているのは言うまでもなく、おそらく特にタウスグ語話者が増えているのだろうが、バシランやスールー諸島の人々は他にもヤカンやバジャウなどいろいろな民族がある。多言語ウォッチャーの私としては、サンボアンガ市内(特にダウンタウン)の小学校などがどうなっているのかも非常に気になる。

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セブパシがサンボアンガ―サンダカン(マレーシア)便を10月29日から開始

2017年にウェブサイトがリニューアルして格好よくなったサンボアンガ国際空港は、一応「国際空港」と名の付くものの、しばらく国際線がなかったものの(ちなみにダバオ国際空港もわりと最近まで国際線がなかった)、ついに復活するそうだ。

セブパシフィックはサンボアンガ―サンダカン(マレーシア)便を10月29日から開始する。サンダカンはマレーシアのボルネオ島(ちなみにインドネシアは同じ島をカリマンタン島と呼んでいる)の東北の方にあり、西側の100万都市、コタキナバルまではキナバル山(ちなみに国立公園で、ちゃんと登山する際には宿を予約したりガイドをつける必要があるそう)の前を通る長距離バスが出ている。所要時間はたしか10時間程度。

サンボアンガ―サンダカンの間は昔からフェリーがあって地元の人が使っているのだが、たしか片道8000ペソぐらいかかるし、もちろん時間もかかる。一方セブパシの価格はというと、とりあえず始めたばかりのプロモ価格では、1300ペソと圧倒的に安い。地元の人には嬉しいに違いない。

サンボアンガ国際空港からサンダカンへは、これまでもいろんな会社が運航しては止め、を繰り返してきた。

たとえば日本語版ウィキペディアの「サンボアンガ国際空港」には、エアフィル(フィリピン航空=PAL傘下)が運航していると書いてあるが、これはとっくになくなっているのに記事がずっと残っている例。

エアフィルは、2013年に再開しようとしたが、すぐに計画段階でひっこめた。
(英語記事を参照)
http://www.routesonline.com/news/38/airlineroute/185908/airphil-express-to-start-zamboanga-sandakan-service-from-late-april-2013/
http://www.routesonline.com/news/38/airlineroute/197665/pal-express-cancels-planned-zamboanga-sandakan-service-due-may-2013/

その前は、アジアンスピリット(事故のあとゼストエアーと名を変え、その後エアアジアに買収された)が2007年からしばらくこの路線を運航していたようだが(参照)、終わってしまった。2007年にはSEAIRという会社も季節限定で運行していたような記述もネット上では見られるが、実際はどうだったのだか(英語版ウィキペディア参照)。

さらにその前もSouth Phoenix Airwaysという会社が運航を発表したものの、乗客が思うように集まらずに止めてしまった、と英語版ウィキペディアには書いてある。

そんなわけでサンボアンガ国際空港はこれまで国際空港としては非常にパッとしなかったのだが、これからはどうなるのか。ミンダナオ出身のドゥテルテが大統領をやっているからにはミンダナオは開発されていくのだろう、と期待したい。