大晦日にコタバトのモールで爆破テロがあった件

去る2018年12月31日に、ミンダナオ島中央にあるコタバト市内のサウスシーズモール(South Seas Mall)の入り口付近で爆破テロがあり、2名が死亡、34名が負傷した。この犯行は軍によって先にテロリスト側の7名を殺害されたことへの報復と考えられているが、今回の犠牲者の中にはバンサモロ基本法の起草にかかわっていた者がいることから、もしかしたらこの人物を狙った爆破テロかもしれない。なお、犯人は1月2日夕方の時点でも特定できていない。

コタバトでは2013年にも爆破テロがあり、8名が死亡している。

ミンダナオの戒厳令は去る12月にもう1年延長されたばかり(参照)。2018年8、9月にはスルタン・クダラット州や南コタバト州ジェネラルサントス市で爆破テロがあったところから見るに、2017年のミンダナオ西部マラウィ市での戦闘が終わってから、テロリスト側の活動地域は少し東にシフトしている(参照「ミンダナオ中部スルタン・クダラット州で爆発テロ」「再びミンダナオ中南部スルタン・クダラットで爆破テロ」「今度はジェネラルサントスで爆破テロ」)
https://www.bworldonline.com/btc-worker-among-2-killed-in-cotabato-bombing/
https://www.independent.co.uk/news/world/asia/philippines-bombing-latest-mall-attack-cotabato-isis-dead-injured-rodrigo-duterte-a8705396.html
https://news.abs-cbn.com/news/01/02/19/cotabato-bomb-blast-an-act-of-terror-pnp

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ミンダナオの戒厳令がまた延長された

昨日、ミンダナオに敷かれている戒厳令の再延長が上下院で可決された。期限は2019年末まで。

ドゥテルテ政権下でのミンダナオの戒厳令は2017年5月下旬に始まり、今まで約1年半。延長はこれで3度目。

https://news.abs-cbn.com/news/12/12/18/congress-extends-mindanao-martial-law-until-end-of-2019

上の記事では戒厳令で可能になる具体的な中身は書いていないが、軍の配置の増強が可能になるのか、俺には具体的なことはよくわからん。

ちなみに、上の記事でも登場しているように、前々大統領のアロヨはすっかり国会議員として復活している。ひとつ前のアキノ大統領の間は首にサポーターをつけて病人ぶっていたが、大統領が変わるとすっかり治ってしまうようだ。

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サンボアンガの語源の一説

前回に続いて、まだ「フィリピン漂海民」を読んでいる。

「フィリピン漂海民 月とナマコと珊瑚礁」門田修(1986)

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その中に、サンボアンガの名前の由来についての伝承らしきものがある。興味深いので以下、引用してみる。(125-126p)

 ジョホール(マレー半島)の近海でいまと同じように家船生活をしている一団がいた。ある日集団の長老が杭を海底に突きたてて船をもやった。それにならって他の家船もつぎからつぎへと、船と船を結んでいった。ところが長老が海底だと思って杭をさしたところは、大きなエイの鼻の穴だった。夜の間にエイは目をさまし、たくさんの家船を繋いだまま泳いで遠くの海にいってしまった。朝になり気がついた人たちはびっくりしたが、自分たちがどこまで引っ張られてきたのか、どうすれば帰れるのか、分からなかった。それから数日、海を漂っていると陸を見つけた。そこにとどり着きやっとの思いで船を泊めるための杭を突きたてた。その場所がサンボアンガだった。
 杭をサマル語でサンブーアンと言う。サンボアンガ市は船を泊める杭のことだ。今でも漂海民たちはサンボアンガをサンブーアンとか、サンブーと呼んでいる。サンボアンガに着いたのち彼らはスールー諸島を西に進み、現在の海域に住むようになったという。つまり漂海民はいったんフィリピンに行って、それから西漸したので、クブーのように家船にアウトリッガーがついたとしても不思議はないわけだ。伝説からこんな風に推理してみることができる。しかし、クブーがあったからこんな伝説を考えついたのかもしれない。伝説もクブーもいつごろできたのか、それがはっきりしていないのだ。
 伝説にもいろいろある。エイに連れられてサンボアンガに着いたのち、ある人たちは陸に上がり農耕を始め、残りの人たちが漂海民になったとか、ジョホールのことには触れず、サンボアンガからエイに引っ張られてきたとか。そしてタウスグ族のあいだでは、自分たちと漂海民はもともとは一緒に住んでいたが、いかにして彼らと漂海民とが別々に暮らすようになったかという伝説をもっている。

この記述は、ウィキペディアの「サンボアンガ」に載っている説明とも近いし、英語版ウィキペディアの”Zamboanga City“の記述と全く同じ。今日の時点で、英語版のウィキペディアにはこうある。

The city used to be known as Samboangan in historical records. Samboangan is a Sinama term for “mooring place” (also spelled sambuangan; and in Subanen, sembwangan), from the root word samboang (“mooring pole”). The name was later Hispanicized and named as Zamboanga.

(拙訳:当市は歴史的記録ではサンボアンガン(Samboangan)として知られている。サンボアンガンは、シナマ語(サマ・バジャウの言語)で「杭を打つ場所」といい、語根はサンボアン(杭)である。この名は後にスペイン語化してサンボアンガ(Zamboanga)と名付けられた。

ちなみに日本語版はこう。

伝承では、初期のオーストロネシア語族の移住者は、山に住むスバノン族、川岸にいた民族、「花の豊かな地」という意味のジャンバンガン Jambangan という平野に住んでいたルタオ族だった。その後、彼らの子孫で低地に住んだ人々、ボートに乗ってきた人々や海を漂泊する人々、バジャウ族やサマール族がこの地を「サンボアンガン Samboangan」と呼んだ。サンボアンガンはジャンバンガンから来たものという説もある。スペイン人が作図した初期の地図では、すでにサンボアンガンの地名が現れ、「船が着くところ」を意味すると言う説明がなされている。またサンボアンガンは、サマール族やバジャウ族が浅瀬で船を進ませるときに使う木の棒「サブアン sabuan」から来たという説もある。初期のスペイン人植民者はここを「エル・プエブロ・デ・ルタオ El Pueblo de Lutao」、ルタオ族の地と呼んだ。

これらの情報から見るに、どうやら門田が聞いた話は正しいのではないかと思う。もともとサンボアンガにはルタオ族が住んでいたのかもしれないが、スペイン人が使うようになった名前はサマ・バジャウの言語から来た、というのはあり得るのではないだろうか。そして「ルタオ族」の情報はどうも少なく、ようは人口がかなり少なかったのでは、と思う。

というのも、1635年にDon Juan de Chaves率いるスペインがサンボアンガにピラール要塞を作った際、300人のスペイン人と1000人のビサヤ人を連れて行ったとされるが、当時の1300人というのは現地人口と匹敵するぐらいの規模だったのでは、とも思える。であれば、数百年の間にルタオ族は言語的にはすっかりスペイン語なりチャバカノ語なりに席を明け渡したのだとしても、それほど不自然ではないのではないだろうか。

もっとも、もしいつかサンボアンガの山奥か田舎の方でルタオ族だという人たちに会えるのなら、けっこうな大発見ということになるのかもしれない。そんな人たちがいたとして、さらに現在まで独自の言語や伝承をもっていれば、の話だが。

アガルアガル(agar agar)についてのメモ

備忘録。フィリピンでゼリー系の食べ物を作るのにおなじみで、スーパーにも売っているアガルアガル(agar agar)について、漠然と寒天なのかなぁ、と思っていた件について。

スールー海のバジャウ(サマ)について書かれた「フィリピン漂海民 月とナマコと珊瑚礁」門田修(1986)

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を読んでいたところ、そこで養殖しているアガルアガルは2種類あって、学名はそれぞれエスピノサ(E. spinosum)とコットニー(Eucheuma cottonii)という、と書かれていた。これを試しにgoogle先生の検索にかけてみたところ、日本藻類学会のウェブサイトに次の日本語資料が見つかり、非常にわかりやすかった。

「21世紀初頭の藻学の現況 海藻工業」西出英一
http://sourui.org/publications/phycology21/materials/file_list_21_pdf/38SeaweedIndustry.pdf

曰く、海藻から作るゼリーには大きく次の3種類がある。
1) アルギン  (Lessonia spp )
2) 寒天 (テングサ、オゴノリ)
3) カラゲナン (Euckeuma spinosum, Euckeuma cottoni, Gigartina pistillata)
 
アガルアガルはこのうちの3)カラゲナンだという。

ちなみに、別ソースによればagar agarは英語でagarまたはchina grassとも言うらしいが、どうやらこれは上記1~3をおおざっぱに総称しているように見受けられる。例えばウィキペディアの「寒天」の左の方にある英語ページへのリンクを開くと、ほとんど英訳のような”Agar“のページにいくが、ここで言っているのはテングサのことなんじゃないだろうかと思う。

今度はジェネラルサントスで爆破テロ

備忘録。

9月16日にジェネラルサントス市(ジェンサン)で、手製爆弾(IED)による爆破テロがあり、8名が負傷した。犯人は特定されていないようだが、先月に隣のスルタン・クダラット州で立て続けに2件の爆破テロが起きた後だけに、同じBIFFの仕業という可能性も考えられる。

この事件を受けて、ジェネラルサントス市では警戒レベルを4に引き上げたということだが、日本の外務省は危険レベル1のまま。外務省の設定している危険度はご都合主義的な面がかなりあるので、大して信用ならない。今後もジェネラルサントス市とその周辺、あるいは再びダバオでテロが起きる可能性はフィリピンの他の地域より高いと、俺は思う。

(英語記事↓)
http://www.gmanetwork.com/news/news/regions/667944/7-hurt-in-gensan-bombing-police/story/

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再びミンダナオ中南部スルタン・クダラットで爆破テロ

8月28日に3名が死亡したミンダナオ中部スルタン・クダラット州で爆発テロがあったばかりのイスラン町で、9月2日に再び爆破テロがあり、少なくとも1名が死亡、10数名が負傷した。爆発物は手製の爆弾とのこと。

(参考英語記事↓)
https://www.rappler.com/nation/210984-sultan-kudarat-explosion-september-2-2018
http://newsinfo.inquirer.net/1027399/another-bomb-explodes-in-sultan-kudarat

前回と同じグループの犯行とすれば、BIFF(バンサモロ・イスラム自由戦士)の仕業ということになる。現在ミンダナオ全土に敷かれている戒厳令は今年末までだが、今回の一連の事件で、延長の可能性も増してくるように思われる。

ちなみに、ミンダナオ島では、去年は南ラナオ州でマラウィ市が占拠され、数カ月に渡って国軍が解放のための戦闘をしていた。
(ミンダナオでの一連のテロについては、当ブログのミンダナオ治安(テロ関連)を参照)

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ミンダナオ中部スルタン・クダラット州で爆発テロ

日本大使館からのメールで知ったのだが、またミンダナオでテロがあったそうだ。今度は、中南部のスルタン・クダラット州の州都イスラン( Isulan)町。
8月28日夜のお祭りの最中に爆発し、死者2名、負傷者30名以上とのこと。当局は、ISIS系テロ組織BIFFが関与していると考えている模様。

(9月3日追記:死者数3名、負傷者36名)

(参考英語記事↓)
http://news.abs-cbn.com/news/08/29/18/military-links-biff-to-sultan-kudarat-blast

ちなみにスルタン・クダラット州は大きな都市のないマイナーな州で、コタバトやジェネラルサントスからほど近い。名前の由来はコタバトを中心としたイスラム教のマギンダナオ王国が17世紀に最盛期を迎えた時の王。この王はスールー王国の姫を妻とし、両国は友好関係にあったとされる。

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