マラウィ市の「テロリストからの解放」が宣言された

今年の5月にIS(マウテグループとアブサヤフ等の合同チーム)が潜入して以来戦闘状態だったミンダナオ中部のマラウィ市について、ドゥテルテ大統領は10月17日に「解放」されたと宣言した。

(英語記事)
http://news.abs-cbn.com/news/10/17/17/duterte-marawi-liberated-from-terrorists
http://www.sunstar.com.ph/manila/local-news/2017/10/17/duterte-declares-liberation-marawi-569850

また、当局は昨日、テロリスト側リーダーのイスニロン・ハピロン(Isnilon Hapilon)とオマル・マウテ(Omar Maute)は軍の作戦によって殺害されたと発表していた。
現在のところ、まだ残党は多少(6-8人の外国人を含むテロリスト30人程度)残っているもののリーダーが殺害されたので収束を宣言した、というのが実態のようだ。
ちなみに、人質もまだ20人程度残っているので、どうみても収束とはいいがたい。

(英語記事)
http://www.sunstar.com.ph/manila/local-news/2017/10/16/isnilon-hapilon-omar-maute-killed-marawi-569626

今回の一連の戦闘で、テロリスト側は800人以上が死亡したとされている。

フィリピンパブ嬢の社会学 (新潮新書)
中島 弘象
新潮社
売り上げランキング: 603
広告

ミンダナオの戒厳令の年末までの延長が承認された件

本日7月22日、ミンダナオ全土に出されている戒厳令の年末までの延長がフィリピン上下院の合同特別会議にて賛成大多数(賛成261、反対18)で承認された。
今回は日本のメディアも取りあげている。

(参考記事)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM22H5A_S7A720C1EA3000/
http://www.asahi.com/articles/ASK7Q63QLK7QUHBI01Y.html

朝日新聞で、「民間人45人を含む578人が死亡。」と報道されている。昨日のrapplerの記事(参照)で読んだ限り、この中に100人の政府軍兵士も入っていて、一方テロリスト側の死者は425人。

上の日経の記事によれば、マラウィに残っているテロリスト側の勢力は70人程度となっている。

結局当初の目標であった戒厳令布告から60日以内にテロリスト(マウテグループとアブサヤフを中心とする連合)を当地から一掃することができず、かつミンダナオの他の地域ではNPA(共産ゲリラ)の動きも前より活発になっているようにさえ見える。おそらく、政府からの締め付けが強くなった分の反発にすぎないのだろうが、一般人からすると今まで事件のなかったところで事件が増えている、という印象ではなかろうか(そもそもマラウィ危機もあるいはしばらく前のボホール島の事件も、もし政府がバシランやスールーでの掃討作戦を強化していなかったら発生しなかったかもしれないが、「もし」の話はあまり意味がなさそうだ)。

ひとついいところは、最近はサンボアンガおよびスールー諸島の方では事件が起きていないようで、IS系過激派に関して言えば、マラウィに勢力が結集された分だけ周辺は静かになっていると言ってよさそうだ。

フィリピンを乗っ取った男
アール・パレーニョ
太田出版
売り上げランキング: 515,107
バナナの世界史――歴史を変えた果物の数奇な運命 (ヒストリカル・スタディーズ)
ダン・コッペル
太田出版
売り上げランキング: 64,059

ミンダナオの戒厳令が年末まで延長になりそう

もうすぐ憲法上に規定された最長の期間である60日を迎える戒厳令について、憲法が認める国会の承認のもとでの延長が実現しそうな見通しだ。
なお、本件について採決が行われるのは22日(土)とのこと。

(英語記事)
http://manilastandard.net/news/top-stories/242268/-161-days-more-for-martial-law-.html
http://newsinfo.inquirer.net/915409/senate-united-on-martial-law-extension-split-over-duration

上記記事によれば、延長の理由はマラウィを襲ったテログループであるISが今後またミンダナオで事件を起こしかねない、ということ。

うがった見方をすれば、戒厳令延長のためにわざと掃討作戦をダラダラと続けているのでは、という風に見えないこともないがどうだろう。

一方で、フィリピン各地にいる麻薬戦争の当事者やらドゥテルテの政敵からすれば、大統領が対テロ作戦にリソースをつぎ込んでいる限りは自分たちが当面狙われなくなるため、テロ組織を応援したいという思惑がありそう。

「ミンダナオ」という縛りがある限りにおいては、お互い戒厳令の延長にはとりあえずは賛成なのかもしれない。

フィリピンを乗っ取った男
アール・パレーニョ
太田出版
売り上げランキング: 515,107
バナナの世界史――歴史を変えた果物の数奇な運命 (ヒストリカル・スタディーズ)
ダン・コッペル
太田出版
売り上げランキング: 64,059

マラウィ危機(マウテグループによる占拠事件)死者数のアップデート

5月から続いているマラウィでのISIS(ここでは、マウテグループ、アブサヤフ、さらにBIFFやアンサルカリファ・フィリピンの連合とされる)との戦闘についてのアップデート。

ネットメディアのRapplerによると6月30日時点で、死者数は
政府側(国軍と国家警察).. 82人
テロリストに殺された民間人.. 39人
テロリスト.. 317人
という。これまでに政府やNGOが1713人救出したが、まだ全面解決にはいたっていない。

(英語記事)
http://www.rappler.com/nation/174358-death-toll-marawi-clashes-june-30

ちなみに5月に敷かれたミンダナオ全域の戒厳令は、60日以内という制限つきなので7月22日頃までには解かれないといけないのだが、果たして現政権はルール通りに行うのか、その点も少し気になるところではある。

フィリピン―急成長する若き「大国」 (中公新書)
井出 穣治
中央公論新社
売り上げランキング: 855
フィリピンパブ嬢の社会学 (新潮新書)
中島 弘象
新潮社
売り上げランキング: 603

ミンダナオ情勢についての日本語記事

これと言って新しい情報はないのだが、情勢理解のための一応のまとめとして日本語記事を紹介したい。

「特別リポート:アジアに迫るISの魔手、比ミンダナオ島の衝撃」6/10付ロイター、(掲載はYahooニュース)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170610-00000025-reut-asia

「剛腕ドゥテルテでもダメか、イスラム過激派退治」ハフィントンポスト日本語版
http://www.huffingtonpost.jp/naoji-shibata/duterte-mindanao_b_17285312.html

マラウィ危機での6月

22日までの死者は民間人26人、武装勢力側276人、政府側67人

とある。マラウィでの掃討作戦はもう終盤に差し掛かっているはずだが、ラマダンが明けてもまだ終わってはいないようだ。また、リーダーのイスニロン・ハピロンやマウテ兄弟の首をとったという報道もまだ聞かない。

ところで上記ハフィントンポストにも引用されている立教大の石井正子教授は、最近「難民ナウ」というラジオ番組の音声インタビューに登場している。
http://nanmin-now.seesaa.net/article/451143113.html

ここでも特に新しい情報はないのだが、今回の危機に際して日系NGOも支援に駆けつけているというのは他の報道ではあまり聞かない類の情報ではある。

一方、同氏がAsia Peacebuilding Initiativeに寄稿している記事の方はもっと詳しい。

「ドゥテルテ大統領、戒厳令布告の背景」
http://peacebuilding.asia/martial-law2017

今回の件、20万人の市民が丸ごと避難民となるような事態は尋常ではなく、また戦闘や空爆で彼らの住んでいた家もかなり破壊されているはずなので、緊急支援および復興支援が必要なのは間違いない。ドゥテルテとしても腕の見せ所になるはずだが、果たしてうまくやれるだろうか。というか、それ以前に掃討作戦の成果をあげられるかどうか。

フィリピン―急成長する若き「大国」 (中公新書)
井出 穣治
中央公論新社
売り上げランキング: 855
フィリピンパブ嬢の社会学 (新潮新書)
中島 弘象
新潮社
売り上げランキング: 603

マラウィからの避難民、59名以上が病死

先月からミンダナオ島の南ラナオ州マラウィ市に、ISISに忠誠を誓ったマウテグループおよびアブサヤフの武装勢力がたてこもっている事件で、6月15日までに避難民が脱水などを原因に亡くなった。ただし、約22万人と言われる避難民のうち、当局がモニター可能なのは避難センターに入っている2万人のみである。以上から、実際の死者はもっと多いと思われる(単純計算で11倍)。

(英語記事)
http://www.rappler.com/nation/173101-death-toll-marawi-evacuation-center

ちなみにマラウィ市の人口は20万そこそこで、ほぼ全員が避難している計算になる。数日前の報道では、人質にとられている民間人は飢餓に苦しんでおり、カーペットを食べるような状況だという。また、子どもが餓死したのを見た、という脱出者の証言もある。とにかく悲惨な状況なのは間違いない。

フィリピン―急成長する若き「大国」 (中公新書)
井出 穣治
中央公論新社
売り上げランキング: 855
フィリピンパブ嬢の社会学 (新潮新書)
中島 弘象
新潮社
売り上げランキング: 603

マラウィ市内のマウテグループ滞在先から7900万ペソの現金が見つかった件

去る月曜日のことになるが、マウテグループ&アブサヤフ掃討作戦が進む南ラナオ州マラウィ市で、マウテグループが根城としていた家から7900万ペソの現金が見つかった。円換算すると1億8000万円から2億円弱ぐらいで、フィリピンで(日本で感じられるよりさらに)巨額なのはもちろん、国内で最も貧しく大した産業のないミンダナオ島ARMMの地域でははるかに価値は大きい。

(英語記事)
http://news.abs-cbn.com/news/06/05/17/p79-m-in-cash-checks-found-in-fallen-maute-stronghold

続いて、去る火曜日にはマウテグループのマウテ兄弟の父親であるカヤモラ・マウテとその一味4名がダバオ市トリル地区シラワンにあるチェックポイントで逮捕された。カヤモラ・マウテは以前MILFのコマンダーだった人物とのこと。彼らが乗っていた車からは45口径ピストル、グレネードがひとつずつ、また現金36万ペソが発見された。

(英語記事)
http://www.cnnphilippines.com/news/…/Father-of-Maute-brothers-arrested-in-Davao-City.html
http://news.abs-cbn.com/news/06/06/17/wanted-maute-clan-chief-arrested-in-davao
http://www.rappler.com/nation/172148-maute-father-arrested-davao-city

一方、マラウィ市での掃討作戦についてはなかなか終結の知らせは届かない。作戦終了まで、もうしばらくかかるのかもしれない。

フィリピン―急成長する若き「大国」 (中公新書)
井出 穣治
中央公論新社
売り上げランキング: 855
フィリピンパブ嬢の社会学 (新潮新書)
中島 弘象
新潮社
売り上げランキング: 603