マラウィ危機のその後(アップデート)

5月に発生したマウテグループなど(現在はISISと呼ばれている)によるマラウィ占拠事件は、規模は相当縮小したものの、いまだに戦闘が続いている。立て籠もっている残党はおそらく20人程度だが、リーダーが殺害されたという報道はないのでまだ戦っているか、戦死したのか、あるいは既に脱出したのか不明。

下の英語記事によれば、これまでのところの死亡者数は、政府側が145人、民間人が45人、テロリストが600人以上となっている。また、マラウィの町は壊滅的な被害を受けており避難民は周辺を合わせて60万人規模。
https://www.rappler.com/nation/181543-marawi-war-reinforcement-lake

町の大部分は既に解放されているので、少しずつ復興に着手しつつあるところ。相当な時間がかかるだろう上に、もともと貧しい地域なだけに復興支援漬けになりそうな感じがしなくもない。

ところで、ミンダナオに敷かれている戒厳令は当初7月までだったのだが、国会の承認を得て年末まで延長されている。フィリピン憲法のことはよく知らないが、年末になったらまた延長の手続きがとられるような気がしてならない。

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マラウィ危機(マウテグループによる占拠事件)死者数のアップデート

5月から続いているマラウィでのISIS(ここでは、マウテグループ、アブサヤフ、さらにBIFFやアンサルカリファ・フィリピンの連合とされる)との戦闘についてのアップデート。

ネットメディアのRapplerによると6月30日時点で、死者数は
政府側(国軍と国家警察).. 82人
テロリストに殺された民間人.. 39人
テロリスト.. 317人
という。これまでに政府やNGOが1713人救出したが、まだ全面解決にはいたっていない。

(英語記事)
http://www.rappler.com/nation/174358-death-toll-marawi-clashes-june-30

ちなみに5月に敷かれたミンダナオ全域の戒厳令は、60日以内という制限つきなので7月22日頃までには解かれないといけないのだが、果たして現政権はルール通りに行うのか、その点も少し気になるところではある。

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ミンダナオ情勢についての日本語記事

これと言って新しい情報はないのだが、情勢理解のための一応のまとめとして日本語記事を紹介したい。

「特別リポート:アジアに迫るISの魔手、比ミンダナオ島の衝撃」6/10付ロイター、(掲載はYahooニュース)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170610-00000025-reut-asia

「剛腕ドゥテルテでもダメか、イスラム過激派退治」ハフィントンポスト日本語版
http://www.huffingtonpost.jp/naoji-shibata/duterte-mindanao_b_17285312.html

マラウィ危機での6月

22日までの死者は民間人26人、武装勢力側276人、政府側67人

とある。マラウィでの掃討作戦はもう終盤に差し掛かっているはずだが、ラマダンが明けてもまだ終わってはいないようだ。また、リーダーのイスニロン・ハピロンやマウテ兄弟の首をとったという報道もまだ聞かない。

ところで上記ハフィントンポストにも引用されている立教大の石井正子教授は、最近「難民ナウ」というラジオ番組の音声インタビューに登場している。
http://nanmin-now.seesaa.net/article/451143113.html

ここでも特に新しい情報はないのだが、今回の危機に際して日系NGOも支援に駆けつけているというのは他の報道ではあまり聞かない類の情報ではある。

一方、同氏がAsia Peacebuilding Initiativeに寄稿している記事の方はもっと詳しい。

「ドゥテルテ大統領、戒厳令布告の背景」
http://peacebuilding.asia/martial-law2017

今回の件、20万人の市民が丸ごと避難民となるような事態は尋常ではなく、また戦闘や空爆で彼らの住んでいた家もかなり破壊されているはずなので、緊急支援および復興支援が必要なのは間違いない。ドゥテルテとしても腕の見せ所になるはずだが、果たしてうまくやれるだろうか。というか、それ以前に掃討作戦の成果をあげられるかどうか。

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マラウィからの避難民、59名以上が病死

先月からミンダナオ島の南ラナオ州マラウィ市に、ISISに忠誠を誓ったマウテグループおよびアブサヤフの武装勢力がたてこもっている事件で、6月15日までに避難民が脱水などを原因に亡くなった。ただし、約22万人と言われる避難民のうち、当局がモニター可能なのは避難センターに入っている2万人のみである。以上から、実際の死者はもっと多いと思われる(単純計算で11倍)。

(英語記事)
http://www.rappler.com/nation/173101-death-toll-marawi-evacuation-center

ちなみにマラウィ市の人口は20万そこそこで、ほぼ全員が避難している計算になる。数日前の報道では、人質にとられている民間人は飢餓に苦しんでおり、カーペットを食べるような状況だという。また、子どもが餓死したのを見た、という脱出者の証言もある。とにかく悲惨な状況なのは間違いない。

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ミンダナオでの爆破事件で300人が亡くなった(2001~2013年)

先週あたりからもう”ISIS”と呼ばれるようになったマウテグループ&アブサヤフによる南ラナオ州マラウィ市占拠事件(マラウィ危機)は3週間経ってもまだ収束していないが、そろそろ時間の問題といえるような状況になってきたそう。ただし一般人が捕らわれたままで餓死した人もできる模様ではある。

さて、今回は特に新しいニュースもないので、ミンダナオでのこれまでのテロについて振り返ってみる。直近で一番の被害者を出したのは2013年のMNLFミスアリ派による「サンボアンガ危機」でたしか民間人が200人近く亡くなったのではと思う。それ以外では同時期に起きた「ママサパノ」での警官44人が亡くなった事件が記憶に新しいが、ただしこれはテロではなく政治家が黒幕だった。

さて、爆破事件に関しては最新ではないものの、2001~2013年のミンダナオでの被害をまとめた英語記事がある。記事中の表を日本語にすると、

地域          事件数      死者数      負傷者
ソクサージェン    25 125 585
ARMM   15 81 349
サンボザンガ半島 10 48 336
ダバオ地方 6 52 315
北ミンダナオ 5 48 190

となる。地域名に私なりの若干の解説をすると、ジェネラルサントス(ジェンサン)等があるのがソクサージェン、ARMMは南ラナオ州などのイスラム自治区、サンボアンガ半島はサンボアンガ市に南北サンボアンガ州も加えたもの、ダバオ地方というのはダバオ市に南北ダバオ州を加えたもの、そして北ミンダナオはアグサンやスリガオ(サーフィンで有名)等があるところだと思われる。

この間、一番狙われていたのはジェネラルサントスだったのだが、実はダバオ市も空港で2002年に大きな爆発があり、さらに数か月後にも空港に隣接する「ササ」というエリアで爆発が起き計38名が亡くなっている。そんなわけで、去年のダバオ市でのテロは初めてということではない。

(英語記事)
http://www.rappler.com/nation/35493-mindanao-bombs-300-killed-12-years

最後に、以上を見るとサンボアンガは他と比べて目立って多いわけではないことがわかるが、これはあくまで爆発事件の話。サンボアンガ周辺では悪質な拉致の事件が後を絶たず、現在でも外国人を含む約30人が人質になっているとされる(本ブログ「アブサヤフが8歳の人質フィリピン人少年を解放」などを参照。

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マラウィ市内のマウテグループ滞在先から7900万ペソの現金が見つかった件

去る月曜日のことになるが、マウテグループ&アブサヤフ掃討作戦が進む南ラナオ州マラウィ市で、マウテグループが根城としていた家から7900万ペソの現金が見つかった。円換算すると1億8000万円から2億円弱ぐらいで、フィリピンで(日本で感じられるよりさらに)巨額なのはもちろん、国内で最も貧しく大した産業のないミンダナオ島ARMMの地域でははるかに価値は大きい。

(英語記事)
http://news.abs-cbn.com/news/06/05/17/p79-m-in-cash-checks-found-in-fallen-maute-stronghold

続いて、去る火曜日にはマウテグループのマウテ兄弟の父親であるカヤモラ・マウテとその一味4名がダバオ市トリル地区シラワンにあるチェックポイントで逮捕された。カヤモラ・マウテは以前MILFのコマンダーだった人物とのこと。彼らが乗っていた車からは45口径ピストル、グレネードがひとつずつ、また現金36万ペソが発見された。

(英語記事)
http://www.cnnphilippines.com/news/…/Father-of-Maute-brothers-arrested-in-Davao-City.html
http://news.abs-cbn.com/news/06/06/17/wanted-maute-clan-chief-arrested-in-davao
http://www.rappler.com/nation/172148-maute-father-arrested-davao-city

一方、マラウィ市での掃討作戦についてはなかなか終結の知らせは届かない。作戦終了まで、もうしばらくかかるのかもしれない。

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ミンダナオのマラウィ危機、死者が175名を超える

先週からこのブログでウォッチしているミンダナオ島南ラナオ州マラウィで起きている掃討作戦について。6月2日の時点で双方の死亡者計が175名になったとABS-CBSニュースが報じた。このうち、テロリスト側は120名。

(英語記事)
http://news.abs-cbn.com/news/06/02/17/marawi-city-siege-death-toll-reaches-175

テロリスト側の死者には外国人も含まれており、判明しているだけでもインドネシア人2名、マレーシア人2名、サウジアラビア人2名、イエメン人1名、チェチェン人1名だという。

政府は6月2日の記者会見でテロリスト側はアブサヤフ&マウテグループではなく、実際はISISだという見方を示した。フィリピンでのISISの活動を認めたということになる。ただ、どちらにせよ母体はアブサヤフ&マウテグループその他だろうから、外国人が多少参加していても主体が変わることはないと俺は思う。

掃討作戦はまだ終わっておらず、一連の事件による被害者はさらに増える見込み。

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