サンボアンガ・デル・スル州でイギリス人とフィリピン人妻が拉致された件

数日前のことになるが、10月4日夕方に、サンボアンガ・デル・スル州のトゥクランという町で、当地でリゾートを経営する70代のイギリス人とフィリピン人妻が何者かによって拉致された。4人の男が拳銃を突き付け、ボートで待機していた2人と合流し海に去って行ったという。

(英語参考記事↓)
https://www.rappler.com/nation/241785-gunmen-abduct-couple-zamboanga-del-sur

おそらくISIS系のテロリストの仕業ではないかと思われるが、現在まで犯行声明は出ていないという。おそらく、実行犯が身柄をアブサヤフ等に引き渡し、そこから身代金交渉が始まるのではないだろうか。

ところでアブサヤフのニュースは最近あまり聞かなくなったが、同10月4日にはアブサヤフのサブリーダー格が、ケソン市に潜伏していたところを逮捕された。

(英語参考記事↓)
http://www.manilastandard.net/news/national/306638/abu-sayyaf-sub-leader-arrested-in-quezon-city.html

この記事を読むと、彼はアジャン・アジャン(Ajang-ajang)というサブグループの所属だったことがわかる(アブサヤフは、ひとつのグループというより緩やかなネットワーク)。記事では、はじめはサンボアンガ市にいた際に月1万ペソの報酬を約束されて参加した、とあり、やはりこのような若者がリクルートされていくのは地方の貧困が背景にあるように思われる。

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アブサヤフに人質にとられていたオランダ人が死亡した件ほか

アブサヤフ掃討の軍事作戦が続いているスールーで、作戦中の去る5月31日にオランダ人の人質、Ewold Horn氏(59)が死亡したことが発表された(参考英語記事)。
彼は2012年に、バードウォッチングのためにフィリピン人ガイド(Ivan Sarenas氏)とスイス人(Lorenzo Vinciguerra氏)とタウィタウィを訪れていたところを拉致された。その際、フィリピン人ガイドは逃げることができ、またスイス人の方は2014年に脱出していた。

なお、それに先立つ今年4月には、人質のインドネシア人1名が脱出した。しかし、一緒に逃げようとしたもう一人のインドネシア人は溺死し、また別に逃げ出したマレーシア人1名は撃たれてしまった。
https://www.voanews.com/a/philippines-abu-sayyaf-hostage-escapes/4864513.html

この記事ではまだあと2人フィリピン人の人質がいる、とされている。

また、5月25日にはスールー州ホロ島パティクル(Patikul)で,アブサヤフの武装集団約30人が地元のコミュニティを襲撃し,子供2人が死亡,住民3人が負傷。その後,応戦した国軍との銃撃戦でASGメンバー6人が死亡,兵士3人及びASGメンバー7人が負傷した。

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サンボアンガ・シブガイ州で地元女性が拉致された件

去る4月4日、サンボアンガ・シブガイ州(サンボアンガ市ではなく、サンボアンガ半島の付け根の方)マランガスで、地元の海産物ビジネスに従事する38歳女性が7人の武装した男たちに拉致された。

(参考:英語記事↓)
https://news.mb.com.ph/2018/04/04/businesswoman-kidnapped-in-zamboanga-sibugay/
https://www.philstar.com/nation/2018/04/05/1802838/woman-kidnapped-sibugay

その後、3日経った時点で関係者と見られる6人が投降したが、捜査は進んでいるか定かではない。
https://www.philstar.com/nation/2018/04/08/1803831/sibugay-kidnapping-6-suspects-surrender
https://news.mb.com.ph/2018/04/07/6-bandits-surrender-in-zamboanga-sibugay/

この界隈は長らくアブサヤフが活動している地域なので、その関連の可能性がある。ただし、メディアは今のところ不明と表現している。

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ミンダナオのISIS(マウテグループ他)のその後

去年ミンダナオ中部にあるマラウィ市を占拠したISISことマウテグループその他だが、マラウィ市が解放された後も根絶はされておらず、300名以上が各地でリクルート活動等を行っているとのこと。彼らはリーダー亡き後10の小集団に分かれているという。

ラップラーの英語記事によれば、現在彼らの新しいリーダーは”Abu Dhar(アブ・ダル)”という者で、40代だそう。同記事は、今年の1月にもマシウという町で国軍とISISとの衝突があったこと、また3月4日にはこのグループのサブリーダーの一人が妻ともども爆発物不法所持のかどでマニラで逮捕されたと伝えている。

このようにフィリピンでもテロには引き続き警戒が必要で、特にマニラやセブ、ダバオ等の大都市でテロを画策している輩がいると思っておいた方がよさそうだ。

(英語記事↓)
https://www.rappler.com/nation/197457-maute-isis-subgroups-abu-dhar

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スールーで比人エンジニアが拉致された件

3日前のニュースになるが、スールーのホロで地元のフィリピン人エンジニア1名が拉致された。スールー諸島はフィリピンとマレーシアの境目のところにあり、ホロはその中心地。下の記事によれば、犯行を行ったのはアブサヤフの可能性があるという。

参考記事(英語)↓
http://news.abs-cbn.com/news/02/14/18/dpwh-engineer-abducted-in-jolo

スールー諸島は今ではフィリピン人ですら、よそ者はガイドなしには入らないようなところ。だが80年代ぐらいはまだそこまでではなかったよう。80年代には鶴見良行がフィールドワークで訪れ、「マングローブの沼地で」等の著作に記述を残している。

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アブサヤフが人質にとったインドネシア人2名を解放していた件

ここのところ忙しくてウォッチしていなかったのだが、2016年11月にタウィタウィで拉致されたインドネシア人2名が、1月23日に解放されていたことがわかった。

英語記事↓
http://newsinfo.inquirer.net/962262/abu-sayyaf-frees-2-abducted-indonesians-who-are-now-with-sulu-gov

昨年11月20日の時点から他に動きがないと仮定すると、現在拉致された状態になっているのは、ベトナム人6名、インドネシア人3名、オランダ人1名、フィリピン人5名の計15名ということになる。

ちなみに2010年に拉致されたとされる日本人の伊藤敏雄はアブサヤフの一員として活動しているとみなされており、この中には含まれていない。
(参考記事↓)
https://www.news-postseven.com/archives/20161114_465749.html

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ミンダナオ戒厳令延長が承認された件

ロイターによれば、今年末までだったミンダナオ島全域に対する戒厳令の一年間の延長がフィリピン議会によって承認された。

フィリピン議会、ミンダナオ島の戒厳令延長を承認 来年末まで」ロイター通信2017年12月13日付

名目はISに忠誠を誓うイスラム過激派グループの掃討だが、ミンダナオには共産ゲリラ”NPA(新人民軍)”の勢力もあり、こちらの鎮圧にも力が入れられている。NPAは長らく前に非合法化されたフィリピン共産党(CPP)の軍事部門で、歴史は古い。最近ではフィリピン政府とCPPが2016年に停戦合意を結び、ようやく和平実現かと思われたものの、翌2017年2月にはドゥテルテ率いるフィリピン政府が停戦を破棄し、掃討作戦に転じている。もしかしたらドゥテルテ個人としては共産党勢力からの選挙協力も受けており平和的に解決したかったのかもしれないが、「テロ組織」という点ではNPAはアブサヤフやマウテグループ等のIS系勢力と同列にくくってしまう方が、国際社会からの協力も取り付けやすい等々あるのかもしれない。とにかく現政権の重点課題は治安の向上で、今後もこの方向は続くとみてよさそうだ。

↑大宅壮一ノンフィクション賞受賞作家、野村進のデビュー作。おもしろかったです。