ミンダナオIS系武装勢力との戦闘で構成員37名を殺害

去る4月25日、南ラナオ州ピアガポ町での国軍とマウテグループとの一連の戦闘で、マウテグループ側勢力のうち37名を殺害したと発表があった。戦闘は22日から4日間続いた。マウテグループはISISに忠誠を誓っているミンダナオのテロリストグループのひとつで、南ラナオ州を拠点としている。殺された37名の身元は調べられているところだが、既に3名がインドネシア人、1名がマレーシア人であることがわかっていて、インドネシアのイスラム過激派「ジェマ・イスラミア」のメンバーであるとされる。また、民間人の負傷者はいなかったと報告された。

(英語記事)
http://cnnphilippines.com/regional/2017/04/25/maute-jemaah-islamiyah-killed-lanao-clashes.html
http://news.mb.com.ph/2017/04/25/afp-4-foreigners-among-the-37-killed-in-firefight-vs-maute-group/

ピアガポ町はMILFのキャンプからわずか5kmのところで、マウテグループはこれまでMILFを隠れ蓑として使ってきたといわれる。

<本ブログ内の他のマウテグループ(maute group)関連の記事>
2017年
マレーシアのサバ州からIS組織戦闘員をミンダナオに送る計画を摘発
IS関連のテロ組織「アンサル・カリファ・フィリピン」のリーダー殺害

2016年
マニラのアメリカ大使館爆弾設置事件で、アンサル・カリファ・フィリピンのメンバーが逮捕
マウテグループから町役場を奪回、ミンダナオ南ラナオ州での戦闘

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ボホール島にアブサヤフが侵入し撃退された件

4月11日、近年初めてアブサヤフがボホール島に現れ、警戒していた国軍および国家警察と衝突した。戦闘ではアブサヤフ側が10名中5名死亡し、政府側も4名死亡した。イナバンガ町という場所である。

AFP通信の日本語記事はこちら↓
http://www.afpbb.com/articles/-/3124771

英語ではもう少し詳細が載っていて、現場は観光客もよく訪れるエリアで、ボホール島の中心地であるタグビラランから北に71kmのところだという。

(英語記事)
http://cnnphilippines.com/news/2017/04/11/Abu-Sayyaf-firefight-Bohol.html
http://www.thenational.ae/world/southeast-asia/nine-killed-after-abu-sayyaf-militants-attack-philippine-tourist-island-bohol

アブサヤフの狙いはおそらく、2年前にダバオ向かいのサマル島リゾートで行ったように、金持ちそうな外国人を身代金目的で拉致することだったのだろうと思われる。このところサンボザンガ近辺は警備が厳しくなってきていること、聖週間でセブやボホールには(土地勘のない)旅行者が増えること、などを考慮しての選択だろう。

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比政府の認識しているアブサヤフの現人質数は31名

GMAニュースによれば、現防衛省長官であるロレンサナが去る3月9日に語った現状の人質数は、外国人24名、フィリピン人7名の計31名とのこと。政府が認識している人質の人数ということで、これまでの報道機関が報じていた数より信頼ができる。

http://www.gmanetwork.com/news/story/602710/news/nation/abu-sayyaf-hostages-nearly-double-during-duterte-admin-says-lorenzana

話の趣旨は、デュテルテ政権が発足した時点では18名だった人質が今では31名と増加している、というもの。

ではここで、内訳を改めて計算してみよう。私が報道を追っていて試算していた人数は、

オランダ人 1名
マレーシア人 5名
ベトナム人 13名
インドネシア人 7名
フィリピン人 5名

の31名だった。全体数こそ合っているものの、フィリピン人の数が2名足りず、外国人の数が2名多すぎることになる。
誤差が出た原因として可能性の高いのは、これまで「マレーシア人」または「インドネシア人」とカウントされていた人のうち2人が実はフィリピン国籍ということではないだろうか。
彼らはボルネオ島の中でもフィリピンに近いところで拉致されているため、どのみち民族的にはおそらく大した差はないだろうし、それに重国籍ということもありうる。

ところでもうひとつ上記からわかるのは、やはり日本人の伊藤は政府的にも人質としてカウントされていない、ということ。日本政府もきっと同じなんだろう。ただ、いつからそうなのかはネット上に記事が見つけられないのでわからない。少なくとも拉致された時点では日本政府も動いたと思うのだが。。

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アブサヤフが8歳の人質フィリピン人少年を解放

アブサヤフの人質になっていたドイツ人が斬首された件」で書いた通り、つい先日アブサヤフによって人質ドイツ人が殺されたばかりだが、また新しい動きがあった。

2月28日、7カ月の間人質になっていた8歳の少年が、約650万円の身代金と引き換えに解放された。

(英語記事)
http://www.sunstar.com.ph/davao/local-news/2017/03/01/abu-sayyaf-frees-8-year-old-hostage-after-7-months-528476
http://www.rappler.com/nation/162762-filipino-abu-sayyaf-hostage-freed
http://newsinfo.inquirer.net/876304/duterte-meets-8-year-old-boy-kidnapped-by-abu-sayyaf
http://www.gmanetwork.com/news/story/601365/news/nation/8-year-old-abu-sayyaf-kidnap-victim-released-in-sulu-brought-to-malaca-ntilde-ang

上の記事によれば、彼と両親の3人は2016年8月5日にサンボアンガ・シブガイ州パヤオ郡バランガイ・クリサップにて同時に拉致された。両親は、同年8月22日と11月13日にそれぞれ身代金と引き換えに解放されていた。父親は政府職員、妻は商店やココナツ・プランテーションなどビジネスを切り盛りしていると報道されているが、身代金のために少なくともいくつかはたたんでしまったようだ。

この拉致事件は、私がアブサヤフ・ウォッチングを始める少し前に起こっていたので、今回の報道を通じて初めて知った。
ちなみに、8歳の子どもが拉致されていたことは2014年にもある。
http://www.rappler.com/nation/73500-abu-sayyaf-releases-girl
このときの少女も、別の町だがやはりサンボアンガ・シブガイ州内で拉致されていた。

さて、これで残る人質は私の試算だと、

オランダ人 1名
マレーシア人 5名
ベトナム人 13名
インドネシア人 7名
フィリピン人 5名

になる。日本人の伊藤は、現在自発的にアブサヤフと行動を共にしていると考えられており、この数に入っていない。

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アブサヤフの人質になっていたドイツ人が斬首された件

去年の11月上旬にアブサヤフが新たにドイツ人1名を拉致で捕まっていたドイツ人が、2月26日にアブサヤフによって殺された。70歳だった。

(英語記事)
https://www.thesun.co.uk/news/2964222/abu-sayyaf-behead-german-jurgen-kantner-isis-style-video/
http://www.aljazeera.com/news/2017/02/abu-sayyaf-video-shows-beheading-german-hostage-170227101245013.html
http://newsinfo.inquirer.net/876003/abu-sayyaf-releases-video-of-beheading-of-german-hostage

身代金の期日になっても支払われなかったことから、すぐに首をはねたようだ。要求していた身代金の額は、6500万円ほどだった。

上の記事によれば、このドイツ人は2008年にもソマリアでも当地の海賊に52日間捕まった経験があり、その際は身代金と引き換えに解放されたのだという。

これで、残っている人質は

オランダ人 1名
マレーシア人 5名
ベトナム人 13名
インドネシア人 7名
フィリピン人 6名

と私は推測しているが、上のインクワイアラーでは少なくとも外国人19名とフィリピン人7名の26人と書かれている。フィリピン人が私の試算より一人多いのは、11月に韓国人が拉致されたときに一緒に捕まった人のことなのかもしれない。ともかく、現状合わせて25人は下らないということだ。

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スールー沖でアブサヤフがベトナム人船員一名を殺害、7名を誘拐

この前ダバオに向かっていたベトナムのカーゴ船がバシラン周辺で襲われたのは11月11日だったが、2月19日またもやベトナム船が襲われた。場所は、領土的にはフィリピン領だがマレーシアのボルネオ島サバ州のすぐ近くにある、タウィタウィ州バグアン島およびタガナック島周辺。乗っていた25名のうち、一名が死亡、7名が誘拐されたという。

(英語記事)
https://tribune.com.pk/story/1332965/vietnamese-sailor-killed-seven-abducted-philippine-pirate-attack/
http://www.rappler.com/nation/161999-vietnamese-piracy-sulu-tawi-tawi

翌日の20日時点では誰の犯行かは明らかでないが、これまでの実績からするとまず間違いなくアブサヤフだと思う。私が前回メディアで見たアブサヤフによる誘拐事件は、1月20日だった。先日のスター紙の記事に載っていた情報から自分で計算してみると、現在いる人質は今回のを合わせて以下となる。

オランダ人 1名
ドイツ人 1名
マレーシア人 5名
ベトナム人 13名
インドネシア人 7名
フィリピン人 6名

ただし、上のtribune.comの記事によれば、27+7で34で、私の試算より一人多い。これは、何年も前に誘拐された日本人の伊藤が含まれているからだが、彼は他のメディアでは現在は自主的にアブサヤフと行動を共にしていると考えられており、既にずっと前から数えられていない。

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ミンダナオのイスラム過激派テロ組織まとめ2017

ここのところ、報道に出てくるミンダナオのイスラム過激派テロ組織がいろんな名前で、複雑です。年を経る毎に組織が枝分かれしている結果、あるいは活動規模が大きくなっている結果と言ってもよいでしょう。政治的成果を上げたタイミングなどで分かれているように見えます。

まず元祖は、ジャビダ事件などを背景に70年代に誕生したMNLF(モロ民族解放戦線)で、1976年にリビアが仲介したトリボリ協定をきっかけに、分裂してMILF(モロ・イスラム解放戦線)と2つになってしまった。その後、MNLFは1996年の政府との和平合意(によってイスラム教徒ミンダナオ自治地域(Autonomous Region in Muslim Mindanao, ARMM)の誕生という政治的成果に寄与した(ただし、全体的にARMMは成功していない)。しかし、MNLFがその後大人しくなったかというと必ずしもそうでなく、2013年にはその一派がサンボアンガを襲って大事件となった(本ブログ「サンボアンガの戦闘」、「サンボアンガ危機」を参照)。

さて、分裂したもう一方のMILFはその後何度も政府と駆け引きを続け、ついに2014年の和平合意でARRMを改める「バンサモロ自治地域」を発足させるという政治的成果に向かうこととなった(ただし、当初2016年に実現するはずだったものの、その年の国会で基本法の法案が否決されたため2017年2月現在、まだ発足していない)。

MNLFから分裂したものには、もうひとつアブサヤフ(Abu Sayyaf)があり、細かく言えば組織ではなく複数の小グループによる緩いネットワークだとされているが、報道ではあたかもひとつの組織であるかのように扱われている。1991年にMNLFから別れ、現在も主にスールー諸島とその周辺を拠点している。特に身代金目的の誘拐行為が有名で、国境線を越えてインドネシアやマレーシアのボルネオ島=カリマンタン島でもときおり活動している。

と、しばらくこの3つがメジャーどころで後はメディアにはほとんど登場しなかったのだが、最近はさらにISISとのコネクションを公言するグループが登場し、さらにマニラやダバオでもテロ事件あるいはテロ未遂事件を起こしたりしている。

具体的にはマウテグループ、アンサルカリファなどなどで、詳しくは下の

ミンダナオ治安(テロ関連)

を参照してほしい。ミンダナオ島内の活動地域についても言及しています。

以上、簡単なまとめでした。

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