テルナテ島で話されていた言語はテルナテ語だったという当たり前の話

チャバカノ語のルーツをたどる研究メモ。

日本人でチャバカノ語を研究している人が歴史的にほぼ皆無な中で、鶴見良行は昭和の時期にサンボアンガやコタバト等を旅していて興味深い記述を残している。彼は著作がたくさんあるので、少しずつ読んでいくことにする。今回読んだのは、この本。

「辺境学ノート」鶴見良行(1986)めこん

辺境学ノート
辺境学ノート

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鶴見 良行
めこん
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P193-194に、ハルマヘラ(Halmahera)マルク州北部の島。テルナテ島は、この属島。
ウォーレスを含めて、当時の書物は、ハルマヘラをGiloloと記しているが、これはトベロ族の村名で、ジャイロロと発音する。かねてよりの疑問氷解。トベロ語は、マラヨ=インドネシア語系とはまったく異なるという。

との記述あり。「テルナテ」はカビテ州にある町の名前でもあるのだが、もともとはこのインドネシアのテルナテ島の王族がポルトガル人によって追い出され、カビテに住み着いたのが由来とされている。テルナテには「テルナテーニョ」というチャバカノ語が残っており(ただし絶滅しかかっているが)、サンボアンガのチャバカノ語と意思疎通できるぐらい類似しているため、元は共通の言語だったと推定されており、マニラやカビテからサンボアンガに伝わったのだろうと考えられている。

俺のかねてよりの疑問は、追い出されたテルナテの王族の母語は何だったのだろう、ということだったのだが、テルナテ島がハルマヘラ島の属島という情報を上記著作から得たことで自分で言語状況を検索してみる気になった。

英語版ウィキペディアを見ると、たしかにテルナテ語(テルナタ語)というのがあって、ティドーレ(tidore)語、トベロ語等と同様にマラヨ語系とは系統が違う西パプア系とある。ということは、やはりテルナテ語はタガログ語とは全然似ていないことになる。

もう少し調べてみるに、オランダの学者Van Der Veenは北ハルマヘラ諸語(North Halmaheran)について、非オーストロネシア(=NAN)諸語の中でも、異民族との接触のためかテルナテに近づく程SOVからSVOに変る傾向が顕著と述べている。語順が変わっていくという話は、それはそれで面白い(たとえばフィリピン諸語と現代マレー語は同じアウストロネシア語族なのに語順が違う)。

最後に、テルナテ島のビデオがyoutubeで観られるのを見つけたのでそれを紹介して終わりにしたい。テルナテ島は大航海時代には地理的にとても重要だった場所なので、観光資源はやはり遺跡。下は、テルナテ王宮を紹介したビデオ↓

また、テルナテ島には北マルク・ムハマディア大学という大学があるそうで、そこには日本語学習者もいるんだとか。用事はないが、親近感がわいたので、いつか行ってみたい。
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201210/article_4.html

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