買ってはいけないタガログ語の本

フィリピン人もわからないような単語がたくさん出てくる。

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おそらく単に古臭い単語が多い、ということだと思うが。

タガログ語は書き言葉の伝統があまりないので(主に話し言葉として使われるので)、日本語だと使いそうな語彙でもタガログ語では馴染まないものも多々ある。ようは、小難しい言葉は英単語を使ったり、文章まるごと英語で言ってしまったりするわけ。小難しい言葉を使う人たちは当然かなり英語ができる人たちだから。社会言語学ではこういう、ある社会における言語の力関係をダイグロシアといいます。

セブアノ語などの地方語は、さらに一段階下とみなされ、タガログ語よりも一段と書き言葉とその規則がないです。具体的には、タガログ語ならまだ学校の科目で「フィリピノ(フィリピン語)」があってテストもあるけど、地方語にはそれがない。基準となるものがないから、言葉の変化がすごく早いです。

最後に、個人的なアドバイスですが、単語の暗記よりはフレーズの暗記の方が効率的です。共起しやすい単語(たとえば「~語」+「話す」)を一緒に覚えておけば文法理解も進むし会話のときにスムーズに出てきやすいからです。この「共起」のことは、「コロケーション」とも言います。
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フィリピン人の英語力の見分け方(チェックリスト式)

フィリピンの公用語のひとつは英語ですが、日常的な場面では実は英語は言うほど話されていません。英語を使うのはある程度フォーマルな席なので、そういうところに縁のない人は特に英語を話す機会がありません。

ただし、英語が得意でない日本人から見たら、なんとなく雰囲気で話せている人のことを、まるで英語マスターのように感じてしまうこともあります。そこで、簡単なチェックリストを考案してみました。上からだんだんと細かくなっていきますので、どのレベルでひっかかっているかでだいたいの英語力がわかると思います。

レベル1. なんでもかんでもに”only”をつける。
しかも”one only”のように、数字の後につけます。これはタガログ語の”isa lang”の直訳です。

レベル2. HeとSheを混合してしまう
日本人にとってこの間違いは考えられませんが、フィリピン人にはけっこう難しいようです。フィリピン諸語では、性別によって言い分けたりしません。

レベル3. “I/ You will be the one who …. “という文型をやたらと使いたがる。
タガログ語の”Ako / Ikaw na lang”からの直訳です。基本的には、「私がするよ」あるいは「君がしてよ」という意味です。

レベル4. untilとbyの区別がついていない
日本だと中学英語レベルですが、やはりフィリピン諸語ではこの区別がありませんので混乱するようです。

レベル5. 否定疑問文に対する答えが反対
これも日本だと中学英語レベルですが、”Don’t you go?”(君は行かないの?)のような疑問に対する返事は、英語では”Yes(行く)”,”No(行かない)”となるところを、日本語と同じように「はい、行きません」、「いいえ、行きます」のように回答してしまいます。

いかがでしたでしょうか。
もうおわかりのように、チェックしているのは「母語であるフィリピン諸語からの影響がどれぐらい表れているか」というところです。発音がそこそこ英語っぽい人でも、テレビや映画で耳が慣れているだけで意外とひっかかったりすると思います。個人的には、大卒なら、せめてレベル3まではクリアしておいてほしいと思います。もしスカイプ英会話の先生だったら、やはりレベル5までクリアしておいてほしいですが、中にはひっかかる人もいるでしょうね。

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(タガログ語)isulatとsulatinに違いはない

最近、フィリピンというかミンダナオの治安の話ばかりメモしてましたが、久々にタガログ語の言語学習について書いてみます。

まず、報告。数カ月前にyoutubeにアップしてみた自作のタガログ語入門第一回の再生件数がようやく2,000を越えました。

どんな人が見ているのか、日本人だということ以外あまり細かいことはわかりませんが、当初は男性の比率が80%以上だったものの、さっき見てみたら60%まで下がってました。タガログ語を勉強する人って、オジサマだけじゃないんですね。

さておき、標題の件。タガログ語の文法は、他のアジアの言語に比べて動詞が大変。活用もちょっと難しいですが、それより困るのは動詞のタイプ(=焦点またはフォーカス)を選ぶところ。1アクションにつき最低2つの動詞があって、たとえば「食べる」ひとつとっても、複数の動詞チョイスから選ばないと文が作れません。

動詞の語根(単語)だけ知っていても動詞が作れない、というのが初級のうちにフラストレーションの元になります。独学で勉強しようとして脱落していく人が増える原因もこれです。なんせ、フィリピン諸語以外の言語からの応用というのができない。

フィリピン諸語の中でもタガログ語に限って言えば、もうひとつ厄介な問題があります。たとえ動詞のフォーカス(焦点)の仕組みを理解しても、個々の動詞について何を選べばいいか、体系的な法則がないのです。たとえば、「食べる」の行為者焦点はもっぱらum動詞の”kumain”が使われて、mag動詞の”magkain”を耳にすることはまずありません。そして、どうしてum動詞を選ぶのかは説明できないんです。まぁ、これについては日本語の動詞にも同じような問題がありますが。

一方で、どっちでもいい場合もあります。行為者焦点動詞でいうと、

bumasa と magbasa 読む
sulat と magsulat 書く

とかです。いつだったか、「um動詞の方が一回切りのアクションで、mag動詞の方が繰り返している感じがする」と聞いたことがありますが、普通に話す分には微妙すぎて気にする必要はないでしょう。

そして「書く」という動詞に関しては、目的焦点のときも、どちらでもいいようです。

isulat, sulatin 書く

あえて言えば、原形(不定形)-inの形は名詞とまぎらわしくなるので避ける傾向があるようです。

タガログ語とセブアノ語の文法の違い

タガログ語の文法入門を作って3カ月弱で、ようやくビュー数が1000を超えました。「文法入門」ということでわりと硬派な内容ですが、大学の先生みたいな正確性に重きを置いたガチガチの教え方はしていません。

さて、タイトルの件、タガログ語とセブアノ語の文法的な違いについて。私はセブアノ語は会話レベルとは言えない程度なのですが、ダバオに1年ちょい滞在して観察した経験から大きな相違点を3つ挙げてみます。

と、その前に。基本的には、両者は文法的にかなりの程度似ています。ただしタガログ語だけを知っている人とセブアノ語だけを知っている人が話してもあまり理解し合えません。文法が似ていても語彙(ようするに単語)がかなり違うからです。

文法的な違いで目立つものは、タガログ語を基準にして言うと

1) セブアノ語には敬語がない
これはよく知られていることですが、タガログ語のときにはしょっちゅう耳にするpoやhoがセブアノ語には全くない。あと、タガログ語では目上の人にはkaではなくkayo、moではなくnyoまたはninyo、あるいはiyoではなくinyoを使うところ、セブアノ語では目上の人に対してもそれぞれkaやnimo、imoを使う(=単数形と同じ)。

2) セブアノ語には倒置詞の”ay”がない
タガログ語は特にフォーマルなスピーチなんかのときに、”ay”を使って語順を逆さまにすることが多い(たとえば、”Pilipino ako.”の代わりに”Ako ay pilipino.”と言うように)。一方、セブアノ語ではこの倒置詞というものがない。

3) 副詞的な使い方をする言葉の出てくる位置が全然違う。
たとえば、タガログ語の”masyado”(とても)とセブアノ語のkaayo(とても)が置かれる位置を比べると全然違うことがわかる。masyadoは文のはじめに置くことができるのに対して、kaayoは形容詞の後にしか出てこない。

タガログ語の例) Masyadong maliit itong T-shirt sa akin. (このTシャツは私にはとても小さい)
セブアノ語の例) Oy, basa man kaayo ning t-shirt nimo, (ねぇ、この君のTシャツはびしょびしょじゃないか)

4) セブアノ語では代名詞に省略形がある。
「私たち(自分たちだけ)」の”kami”が”mi”になったり、「私たち(相手を含む)」の”kita”が”ta”、「あなたたち」の”kamo”が”mo”とか、
指示代名詞ではkiniがni(意味は両方とも「これ」)、kanaがna(「それ」)とか、理屈は単純でも覚え慣れるまでは大変です。

5) “wala”の使える範囲が違う
タガログ語ではwalaは存在文の否定のときだけしか使われないのに対してセブアノ語では動詞の否定でもdiliとwalaを使い分けます。

と、こんな感じで他にも違うところがちょこちょこあり、ちゃんと習得するとなるとタガログ語を勉強した後でもそこまで容易ではないです。
動詞の活用も、仕方が違います。

最後に、文法ではなくて語彙について。フィリピン人がよく笑い話にするように、いくつかの単語は同じ発音なのに、タガログ語とセブアノ語で意味がまったく変わります。有名なのはmalibogですが、ほかにもあります。

ただ、単語をつないで会話をするだけならそんなに難しくありません。まともに話そうとする人は、セブアノ語は市販の教科書も少ないので自分で教科書を作るぐらいの意気込みでないときついと思います。逆に、それが楽しいと思える人なら習得は速いでしょう。

自作タガログ語youtubeレッスン(1~7)を作りました。

2年ぐらいオンラインでタガログ語を教えてみて、今になってもライバルが現れないという悲しい現実(笑)。

ためしに「オンライン タガログ語 日本人講師」でググったら、俺しか出てきませんでした。

ということは、他の言語でやっているようにyoutubeでレッスンビデオを公開するなんてのも俺しかできないのでは、と思ったけど、さすがにそれは先達がいました。日本で育つフィリピン系の人はいっぱいいますからね。

さて、では俺しかできないこと、ということで文法のレッスンをすることにしました。

やり方は、ペンタブレットを使ったシンプルなもの。中国メーカーのHUIONというやつが送料込みで3200円だったのでそれを使ってます。今のところ、好調です。

 

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carinderiaはスペイン語由来ではない

フィリピンの元祖ファストフードは、鍋に入っている出来合いの料理を買ってその場で食べるスタイル。ようするに、フィリピンにあるそこらへんの食堂。

karinderia (carinderia)について。
https://traveleronfoot.wordpress.com/2008/06/16/the-story-of-the-carinderia/

上の記事によれば、カレカレのkareが元になった名前だそう。カレカレ自体、カレーをフィリピン風にしたものと言えなくもないわけで、インド人(セポイ)と関連があるというのはありそうな感じがする。もしかして、18世紀のインド人が食べていたカレーはスパイスが効いてないやつもいっぱいあったのかも。

このタイプの食堂を意味するタガログ語の単語は他に、

turo-turo store ..ほしいものを指示して買うスタイル。
kainan ..一般的意味での、食堂。

があり、英語の”canteen”(簡易食堂)もよく使われる。とにかく、レストランとは区別されている。

注文を受けてから作るレストランはおそらく待ち時間がネックになり、低所得層の間ではあまり流行っているとはいえない。結果的に、レストランはそれなりに高いし、日替わり定食みたいなのも出さない。

ところで、carinderiaスタイルの食事は、おかずが冷めていることが多い。お客さんはあまり気にしないようで、マニラではお店に電子レンジがあることもあるが、地方では冷めたまま出すのが普通。そのかわり、ご飯だけは温かいというのが定番。

低所得層の学生は、家から炊いたご飯を持参しておいてcarinderiaではおかずだけ注文する、というケースも目立つ。もちろんこの場合はご飯も冷えている。そして、おかずに対するご飯の割合が非常に高い。低所得層を中心に、「おかずとは、ご飯がすすむためのもの」という定義なんだと思う。

タガログ語:「代名詞と接辞の二番目ルール」

タガログ語を学ぶとき、耳から覚えてしまう人が多いと思います。というのも、日本語等と比べてタガログ語では会話で使われる文法パターンや語彙がかなり少ないから。動詞の活用にしてもシンプルですから、動詞のフォーカス・システムの基礎さえ理解できれば、あとは自然習得も十分可能だと思います。

とはいえ、他にもトリッキーなところはあります。ようは、例外。

中でも一番苦労するのは、語順が変わるところだろうと思います。以下の二点。
1) 接辞”ay”
もともとタガログ語にあったのかなんなのかわかりませんが、”ay”は興味深い接辞です。カードゲームのウノで言ったら「リバース」みたいな役割を担っていて、これが付くと語順がひっくり返ります。しかし語順が変わるなんてこんがらがるし、カジュアルな会話では頻出しないので初心者は避けるほうが無難。

2) 「代名詞と接辞の二番目ルール」
私は、「代名詞と接辞の二番目ルール」と読んでいます。説明すると複雑になってしまいますが、てっとり早く言えばとにかくこのふたつは2番目に来たがる。どんな時にかというと、HindiとかPwedeとかdito, sa ….とか、とにかくなんかが前についたとき。2番目に来る「代名詞と接辞」とは、ようするに次の文から”kumusta”を除いたふたつのこと。

a) Kumusta ka na?
b) Kumusta na kayo?

この2パターンさえおさえておけば、”po”だろうが”ba”だろうが、あるい”lang”でも、”na”のあるところに置き換えればいい。そして、代名詞と接辞の順番について言うと、b)のパターンが普通だが、”ka”のときはa)のパターンになる、と覚えておけば、とりあえずは十分です。

この「二番目ルール」の結果、VSOだったはずの語順がSVOになったりもしますが、それは結果論です。そもそもSVOとかいう分析の仕方はヨーロッパ言語用のものなので、タガログ語では特に参考にもなりません。

さて、学習が進んで目的焦点とか方向焦点とかの動詞タイプをやるようになったら、そのときは追加で”ko”,”mo”,”nyo”や、代名詞のコンビネーションを覚えなければいけません。順序には規則性がありますが、それはまたいつか書きます。

<おまけ1>
「二番目ルール」について、たとえば以下のサイトで日本語解説があります。ま、読んでわかるようなら苦労はいらない、という漢感じかもしれませんが。
http://learn-tagalog.finite-field.com/home/4-ay
http://pilipino.nobody.jp/mag-aral/lesson75.htm
http://filipino.fc2web.com/yamashita/yamashita435.html

<おまけ2>
セブアノ語(ビサヤ語)も、「二番目ルール」があります。おそらく他のフィリピン諸語にもあるでしょう。たとえばチャバカノ語にもあります。