VoiceTraでフィリピン語(や、その他アセアンの公用語)

AIに関する国立の研究機関が開発した”VoiceTra”という自動翻訳アプリが、無料なのに優秀。アンドロイド版もiphone版もあります。

精度は高いし、自動翻訳した訳文を再翻訳して提示してくれるというデザインもステキ。それに、会話用に入力・出力言語がワンタッチで切り替わるようになっているのも便利。

試しに自分のわかるいくつかの言語で使ってみたところ、google翻訳よりよさそう、と思うぐらいでした。
さらに、マイナー言語の学習用にも使えそう。ちなみにタガログ語は「Pilipino フィリピン語」で出てました。本当はPilipinoだと「フィリピン人」のことで、言語はFilipinoなんですが。音声はフィリピン語(タガログ語)は今のところ対応してないのでテキストのみです。

一方、英語などのメジャー言語はもちろんインドネシア語やタイ語でも、機械翻訳したあとに音声を読み上げてくれるので、いい練習になります。

とりあえずスマホに入れておいて損はないと思います。

やっぱAIすごい、と思いました。

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東大発の日本人ポリグロット

日本人のポリグロット(多言語話者)について調べてみたら、やっぱり東大卒が多かった、という話。

おそらく一番の大天才は南方熊楠(東大というより、その前身だが)で、もちろん戦前戦後の言語学者の面々がおり、中でもチェコ語研究の千野栄一は「外国語上達法」という新書本も出している。

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言語学者以外では、法学の和仁陽
は、東大時代から(英語はもちろん)ドイツ語など8言語ができた、と講談社現代ビジネスのウェブサイト記事にはある(参考

新しいところでは、つい最近まで大学生だった秋山燿平(参考)は薬学部出ながら言語習得に熱中し、10言語近くを正攻法で中上級(B2)まで習得し、この3月にダイヤモンド社から本を出している。

「純ジャパの僕が10カ国語を話せた 世界一シンプルな外国語勉強法」秋山燿平(2018)ダイヤモンド社

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日本では、英独仏中韓は教科書類が相当充実している印象で、それに西葡露が続くというのが俺の印象(それにおそらくラテン語も)。これらの言語は検定があり、その対策本などがあるため独習も比較的スピーディにできる。逆に、東南アジア諸言語に関しては、まだまだ種類も少なく、先人の残した資料から学ぶというより、自分で道を切り拓く覚悟でやらないとけっこう難しい。

それだけが理由ではないだろうが、日本人ポリグロットで東南アジアの公用語を網羅した人はまだいないよう。というか、世界にそういう人がいるのかも俺は知らない。中国人にはすごい人がいそうな気もするので、また別の機会に調べてみたいと思う。

日本の地方自治体が出す証明書の翻訳証明

日本における行政文書の翻訳についてのメモ。

日本の役所でとる証明書は現状、日本語でしか出してくれない。どうも法令でそうなっているよう。その点、台湾内の一部の役所が英語で証明書を発行したりするのとは大違い。

ただし、俺の知る限りでは以下の4つの役所は独自のシステムとして、役所で英訳フォームを用意しており、利用者が自分で翻訳したものを確認して証明/認証くれるよう(2018年3月現在)。
東京都練馬区
西宮市
東大阪市
福岡県大野城市

上記の役所でも英語以外の外国語には対応しないようだし、他の自治体では翻訳会社や翻訳をやっているNPOや国際交流協会などを紹介するだけにとどめている。ここに典型的な例をひとつだけリンクしておく(東京都千代田区)。

ちなみに在外公館では国によっては大使館で翻訳というか、戸籍謄本を持って行ったら英語で「出生証明書」という文書にして発行してくれるところもある。たとえばフィリピンの日本大使館では、戸籍謄本を持参して英文の婚姻要件具備証明書を発行してもらい、それを現地の自治体の役場に持っていく、とか。ほかにも現地で運転免許証の切り替えを行うのに、日本の免許証を持参して大使館で英語の証明書をもらったりしなければならない。

おそらく、在外公館は外務省の管轄なので地方自治体を縛っている規則とは別の原理で動いているからだろう。

一方で、先の4つの自治体のように公文書の翻訳証明(翻訳が正しいという証明)を行う在外公館もある(在ニューヨーク総領事館)。

加えて、ロシアなどでは公証人の代わりに署名証明もするようだ(在ロシア領事館

このような在外公館の機能は逆もまたしかりで、日本にある外国大使館では同様のサービスを行っているところもあり興味深い。たとえば在日本タイ大使館のウェブサイトでは翻訳用フォームがアップされているし、フィリピン大使館のウェブサイトにも、独自のフォーマットで戸籍謄本を部分的に英訳するためのフォームが入手できる(もちろん翻訳会社に頼んで英訳してから持って行ってもよい)。たくさん国があるので、調べればもっと面白いサービスをやっている外国大使館もあるのではないかと思う。

おまけ。戸籍謄抄本の海外からの郵送請求について。
東京都港区神戸市などは一定の条件の下で、海外から戸籍謄抄本の郵送請求ができるとウェブサイトに明示してある。

公印確認とアポスティーユ

証明書翻訳のことで、いろいろとわかりにくいのでメモ。

今回は公印確認とアポスティーユについて。

日本の外務省ウェブサイトによれば、
アポスティーユとは、「外国公文書の認証を不要とする条約」(ハーグ条約、1961年締結)が定めているもので、Apostille(証明文)というフランス語です。日本とロシアはこのハーグ条約に加盟しています。

ハーグ条約第3条によると、「条約加盟国には、この署名の真正、文書の署名者の資格及び場合により文書に捺印されている印章の同一性の証明用として要求することができる唯一の手続当該書を発行する権限のある当局があり、この当局の付与する証明文は認証が不要とする」とあります。日本の場合、上記の「権限のある当局」とは、日本外務省です。日本の書類に対するアポスティーユは、日本外務省領事局領事サービスセンター(証明班)(電話番号: 03-3580-3311(代表)、住所:〒100-8919東京都千代田区霞ヶ関2-1-1)、または大阪分室(電話: 06-6941-4700(直通)、住所:〒540-0008大阪市中央区大手前2-1-22)で取得することができます。さらに、東京と横浜の殆どの公証人役場で取得することができます

ということ。ようは、ハーグ条約に加盟している国の間では、認証が不要であり、その代わりにアポスティーユで足りる、ということ(ただし若干の例外もある)。逆に言えば、ハーグ条約に加盟していないフィリピンのような国では、領事認証が必要。

そしてたとえハーグ条約加盟国であっても、日本では普通日本語でしか証明書を出してくれないため、外国で使う際には翻訳文もつける必要があり、この翻訳文というのが公文書でなく私文書なので、結局たくさんのステップが必要になってしまう。

具体的には日本でこれをする場合、(1)翻訳者が公証役場で公証してもらい、(2)法務局でそれを公証人押印証明してもらって公文書にし、(3)外務省でアポスティーユをつけてもらう。

または、フィリピンのようにハーグ条約に加盟していない国では、(1)翻訳者が公証役場で公証してもらい、(2)法務局でそれを公証人押印証明してもらって公文書にし、(3)外務省で公印確認してもらった上で、(4)フィリピン大使館で領事認証してもらう。

となる。なんだかめちゃ繁雑。。

ところで、1961年の「ハーグ条約」はアポスティーユ関連だが、ハーグ条約には1980年のものもあり、そちらは「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」で、まったく別モノ。これはこれで、フィリピンでは15歳未満の子どもが親権者でない人と海外に行くとき(とダバオから国内線に乗るとき)に、親が事前に同意していることを証明しなければならず面倒な手続きがある(日本からフィリピンに行くときも同様)。フィリピンではこの証明書はWEG(Waiver of Exclusion Ground)と呼ばれている。

さて、少し脱線してしまったので本筋に戻ると、アポスティーユにせよ外国大使館での領事認証にせよ、提出先が求めていなければ必要ない。なので普通、大使館に出すビザ申請のような書類だと関係がなく、求められるとすれば外国での裁判とか、それぐらい大ごとなことでしょう。

提出先の求め、ということで言えば、自分で翻訳してもよかったりするところもあれば、第三者とかプロまたは法人じゃないとダメとかいろいろある。本当に、日本政府や自治体が最初から外国語(特に英語)で発行してくれれば話は早いのに、といつも思います。

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Manigong bagong taonの”manigo”について調べてみた

タガログ語の「あけましておめでとう!」は”Manigong bagong taon”ということになっているが、”manigo”という形容詞はフィリピンに住んでいても日常生活で聞くことは皆無。ということで、何なのかちょっと調べてみました。

まず思い当たったのは英語の”Happy new year”。これに対応しているとすると”happy”という意味なはず。

ただ、西暦を使いだしたのはスペインの植民地時代だったはずなので、スペイン語に対応している方が可能性としては高そうだ。現代スペイン語では新年の定番挨拶文句は”Prospero año nuevo”なので、”prospero”の部分かもしれない。”prospero”は「栄える」というような意味。

普通に使われるタガログ語では「栄える」は”maunlad”。これよりもうちょっとディープな感じ(ディープ=malalim=文語あるいはバタンガスやブラカンの方で使うタガログ語、というニュアンス)がする言葉に”masagana”があるが、さらにそれより古風な言葉なのかもしれない。

実際、フィリピン人の間でも”manigo”の意味については特に若者にはよく知られていないようで、ネット上では「調べてみた」的な記事がいくつもある。
そこでの説明によると、やはりスペイン語の”Prospero”に対応しているという説が最も有力。ただ、オンライン辞書によっては”happy”も”prosper”も両方載っていたりしてはっきりしない。

古い言い方であるなら、昔の辞書にはちゃんと載っているのではと思い、試しにgoogle booksに上がっている古い辞書“Vocabulario de lengua Tagala”
(1754=1860)で調べてみた。すると、p206に”NIGO”があるにはあるが、”NIGÖ”の”O”のところにアクセントマークがあり、上記の”manigo”とは音的に別のよう。一応、記述を見てみると、

NIGÖ. pp. Acertar á lo que se tira. Vm, irse haciendo certero. En que, Naninigoan. Nag-
papanigo, probar vetura. Canigoan, abstracto. La causa de acertar. Y, l. Ica

説明がスペイン語で何が書かれているか以前に、”ma”形容詞としての使用法すら書いていない。どうやら”nigó”は動詞の語根のようだ。
“acertar”の現代スペイン語の意味も、「確かめる」的な感じのよう。残念ながら、まったく関係がない。

次に、Sofronio Calderon’s English-Spanish-Tagalog dictionary was first published in 1915.でも調べてみたが、”manigo”も”nigo”もひっかからなかった。

もしかしたらこれはけっこう深い問題かもしれない。ネットで公開されている古い辞書で見つけられない以上、あとは大学図書館やフィリピンの国立図書館なんかに行かないと調査はできないのでは、と思う。辞書や本での初出はいつなのだろう。埒が明かないので今後の課題としたい。

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テルナテ島で話されていた言語はテルナテ語だったという当たり前の話

チャバカノ語のルーツをたどる研究メモ。

日本人でチャバカノ語を研究している人が歴史的にほぼ皆無な中で、鶴見良行は昭和の時期にサンボアンガやコタバト等を旅していて興味深い記述を残している。彼は著作がたくさんあるので、少しずつ読んでいくことにする。今回読んだのは、この本。

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P193-194に、ハルマヘラ(Halmahera)マルク州北部の島。テルナテ島は、この属島。
ウォーレスを含めて、当時の書物は、ハルマヘラをGiloloと記しているが、これはトベロ族の村名で、ジャイロロと発音する。かねてよりの疑問氷解。トベロ語は、マラヨ=インドネシア語系とはまったく異なるという。

との記述あり。「テルナテ」はカビテ州にある町の名前でもあるのだが、もともとはこのインドネシアのテルナテ島の王族がポルトガル人によって追い出され、カビテに住み着いたのが由来とされている。テルナテには「テルナテーニョ」というチャバカノ語が残っており(ただし絶滅しかかっているが)、サンボアンガのチャバカノ語と意思疎通できるぐらい類似しているため、元は共通の言語だったと推定されており、マニラやカビテからサンボアンガに伝わったのだろうと考えられている。

俺のかねてよりの疑問は、追い出されたテルナテの王族の母語は何だったのだろう、ということだったのだが、テルナテ島がハルマヘラ島の属島という情報を上記著作から得たことで自分で言語状況を検索してみる気になった。

英語版ウィキペディアを見ると、たしかにテルナテ語(テルナタ語)というのがあって、ティドーレ(tidore)語、トベロ語等と同様にマラヨ語系とは系統が違う西パプア系とある。ということは、やはりテルナテ語はタガログ語とは全然似ていないことになる。

もう少し調べてみるに、オランダの学者Van Der Veenは北ハルマヘラ諸語(North Halmaheran)について、非オーストロネシア(=NAN)諸語の中でも、異民族との接触のためかテルナテに近づく程SOVからSVOに変る傾向が顕著と述べている。語順が変わっていくという話は、それはそれで面白い(たとえばフィリピン諸語と現代マレー語は同じアウストロネシア語族なのに語順が違う)。

最後に、テルナテ島のビデオがyoutubeで観られるのを見つけたのでそれを紹介して終わりにしたい。テルナテ島は大航海時代には地理的にとても重要だった場所なので、観光資源はやはり遺跡。下は、テルナテ王宮を紹介したビデオ↓

また、テルナテ島には北マルク・ムハマディア大学という大学があるそうで、そこには日本語学習者もいるんだとか。用事はないが、親近感がわいたので、いつか行ってみたい。
http://grahabudayaindonesia.at.webry.info/201210/article_4.html

OPM: Noche Buena クリスマスイブ

またまたタガログ語の歌の試訳、クリスマス編です。

今回は”Noche Buena”。題名こそスペイン語ですが、歌詞はタガログ語です。
下に貼り付けたのは、今も現役の5人組コーラスグループ、”the company”がアレンジしたバージョンです。

Noche Buena 大晦日
Kay sigla ng gabi,  活気あふれる夜
Ang lahat ay kay saya  みんな幸せ
Nagluto ang Ate ng manok na tinola   お姉さんはマノック・ナ・ティノーラを料理している
Sa bahay ng Kuya ay mayroong litsonan pa お兄さんの家にはレチョンもある
Ang lahat ay may handang iba’t-iba.  皆いろいろなものを準備している
Tayo na, giliw, magsalo na tayo    皆でごちそうを食べましょう
Mayroon na tayong tinapay at keso.  私たちはパンとチーズがある
‘Di ba Noche Buena sa gabing ito  今夜はクリスマスイブだよね
At bukas ay araw ng Pasko! そして明日はクリスマス!

歌詞はここを参照しました↓
http://christmas.365greetings.com/christmas-songs/tagalog-christmas-songs.html

登場した料理名についての注:
マノック・ナ・ティノーラは鶏のスープの一種
レチョンは子豚の丸焼き