書評:夜這いと近代売春

アジアのノーベル平和賞とも言われるらしいマグサイサイ賞を受賞した日本の出版社、明石書店。特に人権関係の本に優れたものが多く、私のお気に入りの出版社のひとつです(ちなみに、もうひとつは東南アジアについて秀逸な本がたくさんある「めこん」)。

さて、今回読んだのはそんな明石書店の出版物のひとつ。

「夜這いと近代買春」森栗 茂一(1995)明石書店

夜這いと近代買春
夜這いと近代買春

posted with amazlet at 15.06.27
森栗 茂一
明石書店
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1995年に出た本書は、民俗学の本。ポスト赤松啓介、かつジェンダー論も踏まえているので、そういう本を先に読んでから本書を読むとより面白いと思う。さらに、著者のフィールドが水俣、天草あたりなので、本書に言及もある通り山崎朋子の「サンダカン八番娼館」、「サンダカンへの道」も読んでおくと良い。

さて、内容はまず明治が始まるところから。そのころにはまだチッソもなく、単なる漁村や農村ばかりだったという。が、漁村にもいろいろ「格」があり、差別もあったという。明治の間に片田舎にも貨幣経済が浸透し、性が商品化されると、男の村人はこぞって売春宿に入り浸るようになり、破産する人が続出したそう。特に鉄道が都市(熊本市)との間に結ばれる際に、村の長老たちが反対した理由として若者が風俗入り浸りになるという不安があったことなど、興味深い。思うに、この頃(戦争まで)の田舎の日本人というのは、生活スタイルやレベルからして、現在東南アジアなんかで百姓をやっている人たちと大差ない気がする。

本書では、夜這いと高度成長期のナンパとの関連が指摘されており、またテレクラ(書かれたのが1995年なので)につながっている、という。それはもっともな指摘としても、終章で出てくる著者自身によるナンパ体験などは蛇足というか、本を売りたいがための奇をてらった企画なのか、唐突な印象は否めない。ただ、ディスコをはじめバブル期の風俗が記述されているのは、私の世代にとってはもはや「歴史」的な内容であり、新鮮だった。

現在では著者のいうところの「夜這い」の系譜は、言うまでもなくインターネットを介した出会い、もしくは「婚活」の合コンのような場がその現代版ということになる。一般の人が納得するかどうかは別として。なぜなら、紹介などに寄らない異性との出会い=夜這いの類、と言われるのは多くの人にとって心外だろうから。

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