回顧録とノンフィクションと自伝的小説の境目

旅行本ではないのだが、旅行しながら読むような本、ということで。

『スリー・カップス・オブ・ティー』グレッグ・モーテンソン、デイヴィッド・オリヴァー・レーリン(2007=2010)サンクチュアリパプリッシング

スリー・カップス・オブ・ティー (Sanctuary books)
グレッグ・モーテンソン デイヴィッド・オリバー・レーリン
サンクチュアリパプリッシング
売り上げランキング: 27,065

本書を読んでいても南アジアに行きたいとは思わないが、とりあえず好奇心だけでのぞいてみる感じで。本書は、パキスタン北部のカシミールあたりが主な舞台。
ちょっと変わったアメリカ人が慈善家から財団を任され、少数民族の村にどんどん学校を作っていくという話。箱ものを作ればOKみたいな話は、「援助業界」的には過去の話だろうと思うのだが、案外そうでもないのかな。めちゃめちゃ面白い本ではないが、まぁまぁよかった。

で、読み終わってネットで検索をかけてみると、実は創作の部分もあるらしい。というか、実際は共著者であるジャーナリスト、レーリンが書いたらしい。ウィキペディアの「ゴーストライター」の項にも載っているが、でも共著者ならゴーストではない気がしますが。さらにこのウィキペディアによれば、なんとレーリンは自殺したのだそうです。国は違えど、小保方事件のことを思い出しますね。

本を出すなら、売りたいと考えるのは当然で、そのためには話を盛るのも普通だと私は思いますが、違うんでしょうか。事実に基づいていればノンフィクションとしてはOKなんじゃないですか、歴史学や文化人類学じゃないんだから。

同じ南アジアが舞台の本で、自伝的小説「シャンタラム」(2005=2011)があります。これまたいくら読んでもそっちに旅行しようとは思わないような本ですが、まぁまぁ面白い。ちなみに全部で3冊ある長編です。

シャンタラム〈上〉 (新潮文庫)
グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ
新潮社 (2011-10-28)
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これなどは、最初から主人公=著者とは言っていないので、自伝的小説というジャンルに収まることになるのでしょうが、中身的に上の「スリー・カップス・オブ・ティー」と変わらないでしょう。ようは売り出し方の問題で、「本当の話です!」と言って出すか、「実は著者の実体験に基づいているんです」と添え書きぐらいのスペースで言うか、の違いだけだったのだと思います。

ところで、本書の中にはしっかりこういう記述があります。モーテンソンの尊敬するマザー・テレサが出所の怪しいお金を受け取っていたことについて、マザー・テレサの言として、
「お金の出所は気にしません。神の御心にかなった使い方をすれば、すべて清められるのですから」

ようは、「本が売れさえすれば中身が真実がどうかはどうでもいいだろ」、ということではないですか。そのお金で清められるようないいことができるんですから。

最後に、日本語版のこの訳者、本当に上手です。大学のセンセイが訳す学術書なんかも、これぐらいのクオリティならうれしいんですがね。

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