エンターテイメント・エデュケーション

先日、国会図書館に行って読んできた本のひとつ、「エンターテイメント・エデュケーション ―社会変化のためのコミュニケーション戦略」シングハル他(2011)成文堂 。

オリジナルである英語版は
“Entertainment Education: A Communication Strategy for Social Change” Arvind Singhal, Everett M. Rogers (1999)

けっこう昔に出されたそうです。

エンターテイメント・エデュケーションとは、平たく言えばマスメディアを使った不特定多数への教育ですが、「教育」といっても早い話が思想の操作みたいなことであって、そういう面では教育工学的だなぁ、と思います。これって、使いようによっては「
エンターテイメント・ミスエデュケーション」も起こりうるわけですよね。

さて、本書で紹介されている手法としては、テレビやラジオ、それから歌謡曲を使ったもの。プログラムの娯楽性の高さを維持したままで、かつその中にメッセージを盛り込んでいく、というのが要点といえると思います。たとえばセサミストリートとか、最近ではドラ(Dora the Explorer)とかを筆頭にした、あの系統です。NHK教育なんかは基本的にちょっと「教育的」すぎて、もはやエンターテイメントじゃないかも、と思うようなプログラムもありますね。個人的には、ピタゴラスイッチが大好きですけど。

「エンターテイメント・エデュケーション」では、ターゲットにできることとできないことがあります。たとえば、掛け算なんかを教えるのは無理です。でも、都市貧困層に高校までは終えておいた方がいいよ、とか、10代の妊娠は大変だよ、とかというメッセージを伝えるのは得意です。詳しくは下のリンクを見ていただけるとよいかと思います。

http://www.nishinippon.co.jp/wordbox/word/6782

最近のアメリカの医療ドラマなんかで社会問題が取り上げられたりするのも、そういう影響なんでしょうね。

とはいえ、もともとエンターテイメントと社会問題とは相性が悪いものではない。意図してなかったかもしれないが、ドラマ「おしん」なんかはそういう事情のもとで世界中でヒットしたらしい。メッセージに共感できる「レディネス」があるところで通用しやすい、ということなんだろう。

さて、著者のシングハル教授は、本書の日本語版出版を記念して、去年来日して熊本まで来ていたらしい。そのときの講演録がネット上にあがっていた。参考までにどうぞ。

http://www.cps.kumamoto-u.ac.jp/seisakusozo/news/data/1334075285.pdf

英語では、2人の著者による連名での2000年の論文もネット上に落ちていました。
http://ro.uow.edu.au/cgi/viewcontent.cgi?article=1139&context=apme

本書でも書かれているが、ペルーで69年に放送された「シンプレメンテ・マリア」という伝説的なドラマが、エンターテイメント・エデュケーション理論の生まれるきっかけになったのだそうだ。フィリピンとの関連でも、歌姫レア・サロンガのベスト盤にも収録されている”That Situation”や、”I still believe”が、同じ狙いのもとに企画されてしかもヒットしたという。さらにはそれでレア・サロンガの知名度があがり、ミス・サイゴンへの抜擢にもつながったそうだ。そういう背景があったのか、と面白く読みました。

ところで日本のJICAでも、(当局がエンターテイメント・エデュケーションを意識しているとはあまり思えませんが)、2006年当時青年海外協力隊員だった山田耕平氏がアフリカのマラウィでHIV/エイズ啓蒙ソングとして作成した”Ndimakukonda“(ディマクコンダ、I love youの意)をヒットさせました。ウィキペディアの「山田耕平」の頁によれば、「『ニューズウィーク』の「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれている。」そうです。

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