原点を確認

話は年末に遡る。ある友人が、契約終了を間近に控え就職先を探していた。そこで教えてもらったひとつの求人募集。給料がよくて、仕事内容も俺のバックグラウンドにマッチしたものだったが、そのときはほとんど興味なかった。面接地が日本だったので行けるわけないし、さらに俺は地方転勤が決まったばかり。マニラを脱出する気満々だった。

なので、そのこと自体すっかり忘れて年末を過ごした。先週から仕事に戻り、今度は職場の同僚と食事をしているときに、そういえば、ということで上の求人募集の話をした。他の会社の状況や待遇についての情報交換とか、わりとよくするので。

その席で同僚から、「応募はタダなんだから、ダメもとで出してみればいいじゃん。受かったら儲けもんでしょ」とアドバイスを受けた。たしかに、もし受かったら給料は今の5倍になるんだから、もっともな話だな、と納得して、履歴書を準備し始めた。

不思議なもので、履歴書を書くという行為は俺の気分を変えさせた。だんだんその気になったきたのである。立ち止まってよく考えてみれば、転勤を控えて待機している今、このタイミングで退職するのは、なんともキリがいいではないか。同僚に指摘された通り、履歴書を書くのはタダ、 ならば、他の求人応募にも出してみようかな。

繰り返すが、履歴書を書くという行為は気分を変えさせる。これまでの経験を総括しながら、入社した当時と今では状況が違う、ということを改めて発見した。今では俺には「社会人経験」が一年半、英語圏での勤務経験も同じだけあり、英語で仕事をすること自体にはもう慣れている。仕事における自分の特性、というか興味もだいたいわかっている。おまけに、フィリピンにおける日系企業の情勢や現地採用の待遇の情報も十分に揃っており、他と比較して今の自分の待遇にはそれなりに不満もある。

気がつけば、いつの間にか転職する気満々になっている自分がいた。

一方、これまでのマニラ生活を反省してみると、ひとつだけ惨敗している分野がある。NGO活動である。こっちに引っ越してきた当初は、働きながらボランティアをしよう、とか、もっと言えば副業でNGOを立ち上げよう、とすら思っていた。が、実際にはいいチャンスを見つけられず、ほぼ何もしていない。そのうち仕事のために精神的に余裕がなくなり、習い事を優先することにしたのだった。

それ自体は全く後悔していないが、今やただのサラリーマン。ボランティアとかNGOとか、一時はどっぷり浸かっていたのに、ずいぶんと離れたところにきてしまった。おかげで逆に、それを客観的に見れるようにもなったのだが。

そして今週。そんな状態で久々に出会った、元オーバーステイの一家。相手に頼まれたわけでもないのに、俺が勝手にケースワークする気でいる。非常にもったいない境遇にいる彼らを、なんとかしてやりたい、という気持ち。東京でボランティアをしていたときがフラッシュバックしてきたようだった。

ちょうど転職活動をしている今、仕事をやっつけでこなしている反面、この自分勝手な「ケースワーク」には身体の内側から火がわくように強烈なドライブを感じる。俺はやはり、この分野で生きていく運命なのだ。

「ケースワーク」を通じて、しばらくすっかり忘れていた気持ちを思い出し、将来の目標を再確認することができた。サラリーマンは仮の姿、本当は俺は教育・福祉系の人間で、今は修行中なのだった。転職するにしてもしないにしても、どのみち一時的な仕事に過ぎない。それが終われば日本に戻り、フロントラインに立つことになるのだ。

当の一家に俺がどれだけ得るものがあったか、伝えてあげたいくらいだ。ボランティアをしたのは俺だが、結果的に彼らに借りを作ったような気分だ。ボランティアすることは、実はボランティアされること。こういう関係が好きなんだな。

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